INSTANT KARMA

We All Shine On

2019-01-01から1年間の記事一覧

Divided Soul

『Divided Soul: The Life of Marvin Gaye』(David Ritzs)を読んでいる。 マーヴィン・ゲイはいつでも特別な存在だった。 彼の不滅の名作『ワッツ・ゴーイン・オン』と『レッツ・ゲット・イット・オン』と『アイ・ウォント・ユー』を何千回聴いてきたか分か…

この世界のさらにいくつもの片隅に(2)

※ネタバレありのため未見の方は要注意 2016年11月に前作を見たときには冒頭から何かに圧倒されて訳が分からないままに気が付くと終わっていた、という稀有な体験をした。3年ぶりの今作は、冒頭で再び持っていかれそうになってしばらくは大変だったが、何とか…

天覧女優

令和元年の締め括りにふさわしい歴史的出来事。 こんなに早く、かくも尊い光景が見れるとは思わなんだ。。°( т৹т )°。 至誠天に通ず。 天皇皇后両陛下、愛子内親王殿下が12月18日、東京・港区虎ノ門の日本消防会館(ニッショーホール)で開催された映画『この…

妄想(9)

今日の1曲目:Happy Christmas / John Lennon 季節柄クリスマスソング特集ということで。定番中の定番チューンからはじまりました。こんばんは、渋谷陽一です。 続きまして、今日のK-POP、というか、今日はクリスマスでKが続くと思いますけれども(ダイゴ風…

妄想ラジオNo.8

今日の1曲目:Only With You / Taturo Yamashita こんばんは。本日は「山下達郎のサンデー・ソングブック」風にオープニングをお届けいたします。 さて、前回の放送をお聞きになった方から、曲の内容が暗すぎて辛かった、とのお便りをいただきました(笑)…

妄想電波(7)

今日の1曲目:Yer Blues / The Beatles ジョン・レノンの命日が今年もやってまいります。皆様いかがお過ごしでしょうか。 僕は世代的にジョン・レノンの死をリアルタイムで実感しませんでした。僕がリアルタイムで実感したポップスターの死は、プリンスだっ…

妄想電波(6)

今日の一曲目: Bluebird / Charlie Parker 貴方だけ今晩は、悲しみよこんにちは、そして武器よさらば。全国0局ネットでお送りしています、妄想夜電波、オープニングを「菊地成孔の粋な夜電波」からパクりつつ第6回目の放送となります。 寒くなってまいり…

トロピカル・マラディ

神奈川近代文学館で、アピチャッポン・ウィーラセタクンの『トロピカル・マラディ』を観る。 画質があまりよくなかったのが残念だったが、森の映像はなんだかずっと心霊写真を見せられているような妙なリアリティがあった。 『中島敦展』の記念上映会という…

妄想電波(5)

今日の一曲目: Break On Through (To The Other Side) / The Doors こんばんは、渋谷陽一です。全国0局ネットでお送りしています、妄想夜電波、いつの間にか第5回目の放送となります。 坂口恭平という人が「2020年代は自殺の時代になる」と呟いていて、な…

白昼夢ラジオまたは妄想電波 第4回

今日の一曲目: Break On Through (To The Other Side) / The Doors 皆様、こんばんは。ご機嫌いかがでしょうか? 連休を挟んで、空気が一気に冷たくなったような気がします。「もう冬支度を」とか考えていると、あっという間に年の瀬が来るのでせうね。 こ…

Blissfully Yours

東京都写真美術館でアピチャッポン・ウィーラセタクンの『ブリスフリー・ユアーズ』を観る。 その前に上映された監督の軽いドキュメントフィルムも観る。 アピチャッポン映画を観ることは一種の感覚のご馳走だ。 『トロピカル・マラディ』もやっていたのだが…

白昼夢ラジオまたは妄想電波 第3回 テーマ「革命」

今日の一曲目: Break On Through (To The Other Side) / The Doors 皆様、こんばんは。ご機嫌いかがでしょうか? 11月3日は文化の日。文化と言えば文化大革命。ということで、本日のテーマは「革命」です。 なんだか物騒に聞こえるかもしれませんが、こ…

白昼夢ラジオまたは妄想電波 第2回

今日の一曲目: Break On Through (To The Other Side) / The Doors はい、皆様、こんばんは。ご機嫌いかがでしょうか? いつものオープニングテーマに乗って、まずは向こう側に突き抜けちゃいましょう。 若いリスナーの方々のために説明しますと、ザ・ドア…

野いちご

家の近くの映画館でベルイマンの『野いちご』を観てくる。 78歳の医学教授(イーサク・ボルイ)が大学で名誉博士号を授与される日の一日を追ったドキュメントという体で、彼の意識・無意識の世界が夢や覚醒時の出来事を通して展開されていく。 ベルイマン…

犠牲の贈り物

早稲田松竹でタルコフスキーの『サクリファイス』を観る。 タルコフスキーの遺作であるこの作品を観るのは初めてだったので、なるべく先入観なしに見ようと思い、映画の解説や評論その他の媒体にはできる限り目を通さずに見に行ったのだが、それでも事前に聞…

白昼夢ラジオまたは妄想電波

今日の一曲目: Break On Through (To The Other Side) / The Doors はい、皆様、こんばんは。ご機嫌いかがでしょうか? 嬉しいことや哀しいことがあった方も、気が狂いそうに退屈だったという人も、ヤケクソになりそうな人も、何かをおっぱじめたくて仕方が…

Lady McGoohan

※『じゃりン子チエ』というマンガに興味のない方はスルーして下さい。 20年くらい前に、『じゃりン子チエ』について色々と妄想や考察めいたことを書き連ねたことがあるのだが、そのときに書き残したことを思い出したので忘れないうちにここに記す。 さて、こ…

ドストエフスキー 転回と障害

福田勝美著『ドストエフスキー 転回と障害』(論創社)という本を買って読む。 今年の7月に出たばかりの本だが、今までに読んだドストエフスキー論の中で一番しっくりくる部分が多かった(もっとも、当たり前のことだが、すべての箇所に同意できたわけでは…

大知識人

この数週間は『悪霊』にすっかり憑りつかれていて、今は米川正夫訳と江川卓訳と亀山郁夫訳を頭から順番に読み比べを開始した。 どの翻訳も一長一短だが、今のところ(第1部の途中)米川正夫訳が一番しっくり来る。 江川卓訳はいいのだが、ステパン氏のフラン…

真皮の蒲原

『マイケル・ジャクソンと神秘のカバラ』という本(これが本と呼べるのだろうか?)を読む(正確には本屋で立ち読み)。 書店がアマゾンのせいで次々に亡くなっていく中で、この「立ち読み」という風習が死滅していくことは現代の悲しき事態の一つである。 …

貧しき人びと

車中で『貧しき人びと』を読む。最後の頁だけは読んでいると号泣しそうで怖かったので読まなかった。あとで独りになって読んだらやっぱり号泣した。 世間から侮蔑の目で見られている小心で善良な小役人マカール・ジェーヴシキンと薄幸の乙女ワーレンカの不幸…

リベラリストの死

『悪霊』の登場人物の中で、最もよく描けているのは、スタヴローギンや他の人物よりも、ステパン氏であるという説は有力だ。 西欧(フランス)かぶれのリベラリストだが、偽善的で腰の座っていない姿勢を、自らの教え子である、より過激な自由思想をもつ下の…

永久調和の瞬間

キリーロフは、自分は既に救われたと信じている。 なぜなら、究極の真理を悟ったから。あとは、その具体的実践の問題が残るだけだ。 オウム真理教の内部にカメラを持ち込み、信者たちの姿を曝け出した「A」「A2」というドキュメンタリー作品(森達也監督…

只の虚無

『悪霊』について、しつこく書く。 スタヴローギンは、この物語に登場する時点では、既に精神的な廃人になっている。 小説の中の彼は、幻となった「告白」の章を除いては、まるで亡霊のような存在感だ。彼は、幼少時に父が不在で、根無し草のようなステパン…

「悪霊」の謎

清水正は『「悪霊」の謎』の中で、作中で物語の執筆者という設定になっているアントン(G)について、ステパンの念友だったとか、ピョートルと同じ任務を果たしていた政府のスパイであったとかのトンデモ説を真面目に論じていて、急に萎えた。 そういう読み…

Demons

『悪霊』読了。 これも30年ぶりの再読だが、やはり当時と印象がだいぶ違う。 今回は、ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーの最期のくだりが涙なしでは読めなかった。 加賀乙彦という作家の『小説家が読むドストエフスキー』という本(集…

理由なき殺人

理由なき殺人には、そもそも、目的というものがない。金品奪取は、理由なき殺人を現実化=実現するための、見せかけの口実、いわば偽りの理由にすぎない。だから、彼は、盗品が何であるかを知りたくもなければ、財布の中身を見もしないのである。 では、何の…

未成年

ドストエフスキー『未成年』をひとまず読了。 他の長編とは毛色が違って、読み通すのが少し大変だった。 この独特な文体の感覚に一番しっくりくるのが個人的には岡村靖幸『青年14歳』という曲ではないかという気がする。 山城むつみという評論家は、『未成…

白痴

「この小説(『白痴』)は、その価値を知る者にとっては、何千ものダイヤモンドと同じ価値がある」 ―レフ・トルストイ トルストイは当然知ったうえで言っているのだが、この小説には数千のダイヤモンド以上の価値があり、それは比較になり得ない。 10万ル…

ナスターシャ

『白痴』を読み始めた。 自分の中では、ナスターシャ・フィリポヴナはナスターシャ・キンスキーのイメージだったのだが・・・ 実際彼女の名前は父親(クラウス・キンスキー)が『白痴』にちなんでつけたのだとか。 彼女の姉は父親から性的虐待を受けていたら…