INSTANT KARMA

We All Shine On

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021.12.30

年末は、黒澤明『わが青春に悔なし』(原節子主演)をブルーレイで見て、徳田秋声と嘉村磯多と尾崎一雄を読んだりして過ごしている。あと最近いくら眠っても寝たりない気がするので昼間から泥のように寝た。 『わが青春に悔なし』の原節子は、よかった。とい…

人間鑑定図

高峰秀子著『にんげん蚤の市』収録「人間鑑定図」より ある日のせりに、俗にお歯黒壺と呼ばれる越前の壺が出た。丹波、信楽(しがらき)など、ゴツゴツとした土(つち)ものにはあまり縁のない私だけれど、そのお歯黒壺は珍しく小型でコロリと丸く、生意気に…

ウィトゲンシュタイン入門

『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)という本の中で、著者で哲学者の永井均は、こんな風に書いている。 小学校3,4年のころ、自分でも問いの意味がよく分からないながら、「私はなぜ、今ここにこうして存在しているのか」というようなことをぼんや…

Rough Life

今月は、徳田秋声『あらくれ』と『仮想人物』を読んだ。徳田秋声は著作権が切れているので、無料で電子書籍をダウンロードできる。だが、『あらくれ』は最近、岩波文庫から新刊で出て、解説を佐伯一麦が書いているので、それを買って読んだ。やはりkindleよ…

復活

キリストは反逆児であり、ユダも反逆児である。キリストは、まずローマの政治的圧政に強く反逆し、同時にそれを敵とする律法的民族主義にも反逆した。ユダはこの二つの点でキリストの同志であり、しかも彼の教義の〈忠実な〉使徒であるが、この〈教義〉を裏…

白鳥随筆

あまり読むものもなく適当に図書館で借りた正宗白鳥の随筆を読んでみたら、これがなかなか面白い。 坪内祐三の編集で、彼の書いた解説から読んだが、なるほどと思うことが書いてある。 正宗白鳥と言えば明治の評論家で、自作の小説はあまりパッとせず、評論…

もう私小説は打ち止めにしようと思っていたのだが、2021年に中公文庫から出た車谷長吉のアンソロジーを読んでしまった。 といっても『抜髪』と『漂流物』は以前読んだので、それ以外の収録作品『変』、『狂』、『武蔵丸』などを読んだ。面白かった。 巻末エ…

The Lord Notes On Vision(5)

ジム・モリスン詩集より 錬金術師は人間の性的活動の中に世界の創造、植物の生育、金属の組成との符合を見出す。彼らが雨と大地の結合を見るときには、それをエロチックな意味で、性交とみなしている。これは自然界のあらゆる領域に拡張される。すなわち彼ら…

私小説のすすめ

図書館で小谷野敦『私小説のすすめ』を借りる。思ったより面白く参考になるので備忘録メモとして抜粋しておく。 私小説というのは、基本的に、自分とその周囲に起きたことを、そのまま、あるいは少し潤色して書いた小説のこと。必ずしも「私」が主人公である…

The Lord ― Notes On Vision (4)

The Lord ― Notes On Vision James Douglas Morrison マイブリッジはフィラデルフィア動物園から動物の被写体を、また大学から男優を得て来た。女たちはプロの絵描きのモデルだったり、女優や踊子たちもおり、48のカメラの前を裸で行進した。 映画はある種…

草の響き

『草の響き』という映画を見た。 原作は佐藤泰志の小説で、数年前に映画化された『きみの鳥はうたえる』と同じ単行本(文庫にもなっている)に収められている、短編といっていい作品である。 主演は東出昌大(和雄役)。原作にはない登場人物として妻・純子…

The Lord - Notes On Vision (3)

古代ローマでは、その潜在的な肉欲が権力の脆弱な秩序を脅かしていた放埓な男たちの疑わしい健康法のために、売春婦たちは公道の上の屋根に晒されていた。貴婦人たちが、顔をマスクで隠し、裸体になって、自身の密かな興奮を求めてこれらの恵まれない眼差し…

The Lord - Notes On Vision

ジム・モリソン詩集『The Lord―Notes On Vision』より 古代の共同体では「よそもの」は最大の脅威と感じられた。 出歯亀(voyeur;覗き屋)は自涜者であり、鏡は彼の記章、窓は彼の餌食だ。 男性器は小さな顔であり、盗人とキリストの三位一体を形成する 父…

ジム・モリソン詩集『The Lord ― Notes On Vision(神―視覚〔ビジョン〕についての覚書)』

ジム・モリソン詩集『The Lord ― Notes On Vision(神―視覚〔ビジョン〕についての覚書)』より。彼はこの詩集を1970年に自費出版で出し、知り合いに配って回った。 われらの崇めるところを見よ。 「演者たち」―子供、役者、賭博者。 子供や原始人の世界に偶…

And Your Bird Can Sing

佐藤泰志『きみの鳥はうたえる』を読む。これまで読んだ作品の中では一番すんなりと読めた。 この人の小説は基本的に二十代前半の男が主人公で、郊外の都市で地味な仕事についていて、独身で、関係性が微妙な恋人がいて、夏物語で、というイメージが出来上が…

水晶の腕

野沢収『ザ・ドアーズ 永遠の輪廻』とジム・モリソン詩集『「神」「新しい創造物」』を図書館で借りる。 野坂収という人は、1958年北海道生まれ、シンガソングライター三上寛のマネージャーをしながらロック評論家として「レコード・コレクターズ」や「ミュ…

Anyhow Anywhere Anyway

何に対しても関心が持てないというのは生きていく上でも痴呆症のリスクの上でも危険信号だと思うので、とにかく少しでも好奇心を持ち、読みたいと思った本を読むようにしている。今は松村雄策から早川義夫につながって、ドアーズ関連、そして松村雄策が評価…

Dear Jim

「国民は浮かれ騒ぐべきだ……全ての労働、全てのビジネス、全ての権威が停止する、完全に自由な一週間。それが始まりになるだろう」 ジェームス・ダグラス・モリソン(1943-1971) 『ドアーズ 結成50年/最も過激な伝説』(KAWADE夢ムック 文藝別冊)の野澤収イ…

同じこと

早川義夫と佐久間正英が一緒にやっていたのは知らなかった。 佐久間といえばエレカシがエピックをやめて『ココロに花を』で再デビュー(?)するときのPDとして名前を知っていた。とにかく売れ線のバンドを手掛けるというイメージだった。宮本浩次は当初佐久…

Doors of Perception

最近ドアーズばかり聴いていて、ドアーズについての情報を求めてネットを漁っていたら、ジム・モリソンの妻パトリシア・ケニーリーが今年の7月に75歳で亡くなっていたのを知った。 ジム・モリソンの恋人と言えばパメラが有名だが、付き合ったのはパトリシア…

You Are Daisy

松村雄策の尊敬している早川義夫の短いエッセイが彼のHPに載っているので読んでみる。ひとつひとつ宝石のように光る文章だと思う。松村雄策のことも出てくる。 松村雄策は早川義夫を尊敬していて早川義夫はつげ義春を尊敬していてつげ義春は島尾敏雄を尊敬…

きづな

湯川れい子さんの自伝『女ですもの泣きはしない』(角川書店)が面白く一気に読んだ。 ジャズ評論家としてデビューし、エルヴィスにもビートルズにも会って、インドのカリスマ聖者にも会って、二十世紀日本の生んだ最高のミーハー少女なのだと思った(もちろ…

Minor Request

八十年代に放送されたテレビ番組『ロック大全集』をVHS録画からDVDにダビングしたのを見返す。 今となっては時系列的にはちょっとおかしな編集も多い。ストーンズの「オルタモントの悲劇」の映像の後にキンクスやらハーマンズ・ハーミッツやらの映像が出たり…

ロック大全集

僕が十代のときに動くジミヘンドリクスやジムモリソンやジャニスジョプリンを見て感動したテレビ番組は、『ロック大全集 All You Need Is Love Part2』という深夜に放送された番組であることが分かった。VHSビデオテープで録画したのをDVDにダビングし…

Still Alive And

昨日の記事を書いた時にはまだ読んでいなくて、今朝図書館でロッキング・オン最新号に載っている松村雄策「Stii Alive And...」を読んだ。 短いエッセイなのに全部読み切るのに心の準備も含めて一時間くらいかかった。 かなりショッキングな内容なのだが、い…

66

5年前に脳梗塞で倒れたというのを知らなかったのだが、「ロッキング・オン」の最新号に松村雄策の文章が載っているというので、近くの図書館で彼の本(「僕を作った66枚のレコード」)を借りた後で本屋に寄ったら「ロッキン・オン」がなかった。宮本浩次…

Of Beauty

『文學界』の最新号に西村賢太の創作が載っているのを読んだ。連載小説以外の読み切り中編は久しぶり。ここ数年の生活状況を交えつつ、ライフワークである藤澤清造全集発刊への決意を改めて表明。コロナ禍における苦労話や腰痛話、芥川賞後に七年間連れ添っ…

松村

松本清張『昭和史発掘』の中に書かれている「スパイMの謀略」を読み返し、その後日談が「『隠り人』日記抄」という作品に書かれていると藤井康栄の本にあったので、昨日図書館で借りて読む。昭和三十三年ころ、北海道のうらぶれた長屋で芸者女と暮す凋落し…

Spy M

日本共産党の最大のスパイであったスパイMこと飯塚盈延が、戦後に戸籍も名前も変えて隠棲生活を送りながら執筆した論文の一部。 スパイMの行った物凄い謀略については、一般に入手できるものでは松本清張や立花隆の著書に詳しい。大変なことをやらかした男で…

1939-1980と1980-2021

松本清張『昭和史発掘』の二・二六事件から五井昌久氏の語る磯部と三島由紀夫の話から工藤美代子が語る三島と川端の因縁話まで彷徨う。磯部の怨霊は二十一世紀の今もまだ成仏していないのだろうか。同じような想念を持つ人間がこの世にいる以上は存在し続け…