INSTANT KARMA

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2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

聖骨

小島信夫の『暮坂』収録の短編「聖骨」などの中に、整体治療のようなことをやっている新興宗教のような団体Zとその指導者であるZ師のことが出てくるが、今はネット社会なのでちょっとキーワードをかけて検索すれば、それがMRT治良というものであることな…

『静温な日々』 『暮坂』 『うるわしき日々』

『静温な日々』小島信夫 『暮坂』小島信夫 『うるわしき日々』小島信夫 『こよなく愛した』小島信夫 『小説修業』小島信夫・保坂和志 『各務原・名古屋・国立』小島信夫 『残光』小島信夫 『暮坂』と『各務原・名古屋・国立』は古本屋で各八八〇円で買う。あ…

みちよと馬

小島信夫を読んで、純文学は美文でないといけないとか人間の感情や思考のアヤを丁寧に描かないといけないという先入観があっさり崩れた。 例えば、絵を描くためには、基本的なデッサンの力(絵心〈えごころ〉)が必要であるのと同じように、小説を書くために…

ノブヲの別れる理由が気になった

坪内祐三『「別れる理由」が気になって』読了。 1968年から1981年まで実に12年に及び『群像』に連載された小島よしお信夫の長大な小説『別れる理由』の内容を紹介・解説してくれるという親切な本。 結論を言えば、この本を読めば、よほど興味がない限り『別…

根津裏

老子第58章に云う、 禍の中には必ず福が寄り添うているし、福の足元には必ず禍がかくれている。これが禍の極、これが福の極と誰にも決められるものではない。むしろこれを正そうとしない方がいいのだ。 正しいものを正しいと求めた結果が、かえって変奇なも…

こじのぶ

最近小説を読み過ぎているせいで、とうとう頭がオーバーヒートを起こしたようだ。酷い頭痛に襲われ、頭の芯がズキズキして眠れなかった。 これはたぶん小説の読みすぎ、それも主に小島信夫の小説が原因に違いないと直感した。 この数か月、ほとんど手当たり…

Plumhill Memory

今朝起きるときにあの病院のことを不意に思い出した。 今から四半世紀ほど昔に、2年間いた職場である。 そこは、区内唯一の小児専門の公立精神病院であった。最寄駅から徒歩3分、近くに緑豊かな広い公園があり、その中を歩くのは爽快であった。よく公園の…

田中英光全集第5巻

今日は田中英光全集第5巻を読んだ。 町にて、切符売り場の民主制、N機関区、少女、途上、風はいつも吹いている、地下室から、流されるもの、嘘、小さな願い、共産党離党の弁。 「風はいつも吹いている」と「流されるもの」は以前に読んだことがあったので…

抱擁家族

今年に入ってから、ほぼひと月ごとに文学作品により衝撃を受け続けるという幸福な体験をしている。これは読書冥利に尽きるというものであろう。 これまでいかに小説、とりわけ日本の戦後文学というものを読んでこなかったかという自分の不勉強ぶりを痛感させ…

A Day Without Nothing

今週はじめじめした雨の日が続いている。 菊地成孔は、「みんなが嫌がる今みたいな天気が僕は好きだ。街が濡れていると生命力を感じる。今夜アップされるラジオデイズで話しているのだが、カメラアイが自然主義になる時、どの光景も映画になってしまう。」と…

小島信夫は?

小説とは読んでいて面白いかどうかがすべてで、面白い小説には引き込まれる文体がある。そこには読者に対するある種のサービス精神といったものが必要だ。しかし例外的に、そのようなサービス精神が一切なく、自分勝手に書いたままの文章が面白いという場合…

小島信夫

小島信夫の「家族小説集」を読んでいると益々訳が分からなくなってくる。 広く言えばシュール・不条理系のくくりになるのかもしれないが、作者がとりたててシュールな味わいや不条理性を意図しているとは思えない。 小説を面白く読むためにはどこかで登場人…

みな生きもの みな死にもの

図書館で借りた藤枝静男の代表作といわれる『田紳有楽』も読もうとしたが、ちょっとついて行けず挫折。 変形私小説でも『空気頭』くらいのレベルならまだついて行けるのだが、『田紳有楽』はちょっと飛び過ぎている感じがする。 スピリチュアル的な要素がけ…

オリンポスの黄昏

田中光二『オリンポスの黄昏』を読む。 田中光二は田中英光の次男で、彼自身有名なSF作家である。 その田中光二が、生涯でただ一つの私小説と銘打って一九九一年、著者五〇歳のときに書いたのが、この小説である。単行本には、「あとがきにかえて 父・田中…

『田中英光傑作選』(西村賢太編、角川文庫)

ほとんど丸一日かけて『田中英光傑作選』(西村賢太編、角川文庫)を読む。 「オリンポスの果実」 「風はいつも吹いている」 「野狐」 「生命の果実」 「離魂」 「さようなら」 「野狐」、「生命の果実」、「さようなら」は読んだことがあったが、この並びで…

津島佑子『光の領分』

再び、保育園とライブラリーの間を往復する一週間がはじまった。その頃の私が、一番怖れていたものは、自分の寝坊だった。気がつくと、十時をとっくにまわっていたことが、何度となく、あった。上司からも、保育園からも、再三、忠告を受けていた。寝坊した…

光りの領分

津島佑子『光りの領域』を図書館で借りて少しずつ読んでいる。『寵児』と同様に、シングルマザーのダメ女(と呼んでよいかどうかには躊躇いがあるが、「世間的」にはそう見なされるような存在)の主人公の語りが、書き手と主人公との程よい距離感を感じさせ…

寵児

男の私小説ではなく女の書いた私小説を読みたい、と思い、とりあえず本屋に行って目に付いた津島佑子『寵児』という文庫本を買って読んでみた。 著者については、太宰治の娘で、著名な現代作家であるという以外に何の予備知識もなく、読んでみたら私小説では…

長太郎

1938年、数えで38歳の時に「永住の覚悟」で故郷の小田原に引き揚げ、海岸沿いにあった「物置小屋へ以後二十年間起伏する身の上」となった川崎は、敗戦後、海軍に徴用され赴任していた父島から帰還した後、1948年10月の『新潮』に掲載された「偽遺書」を書い…

川崎 長太郎

連休中は川崎長太郎をひたすら読み続けた。 こういう時に図書館は便利である。去年とは違い、緊急事態宣言が出ても図書館が閉館にならなかったのはありがたい。おかげで川崎長太郎の小説のうち読めるものを粗方読むことができた。 彼の私小説になぜこんなに…

川崎長太郎

この連休はひたすら川崎長太郎を読んで過ごした。満腹。 現代日本文学大系49(筑摩書房) 「無題」1924年(大正13年)10月 北川健太郎。カフェの女給(お明とお安)との関係を描く。 文体に志賀直哉の影響が感じられる。 「落穂」1943年(昭和18年)6月「八…