INSTANT KARMA

We All Shine On

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

そして僕たちは途方に暮れる

週末に読んだ小説など 小島信夫『別れる理由3』 徳田秋声『新所帯(あらじょたい)』 佐伯一麦『渡良瀬』 佐伯一麦『鉄塔家族』 佐伯一麦『石の肺 僕のアスベスト履歴書』 和田芳恵『一葉の日記』 和田芳恵『暗い流れ』 綿矢りさ『インストール』 金原ひと…

Short Circuit

小島信夫の事故物件のような小説に付き合うのがしんどくなってきたので、今週は佐伯一麦の『ショート・サーキット 佐伯一麦初期短編集』に手を付けている。 佐伯一麦は、「端午」と「ショート・サーキット」という作品で二度芥川賞の候補になっているが、受…

Reason to depart

小島信夫『別れる理由』は第59章から「夢くさい」展開に入り、力のある作家が、自意識を奔放にぶちまければこうなる、といったような、映画でいうとフェリーニの「8 1/2」のような展開、筒井康隆にもたぶん似たような作品はあるがここまでではないだろ…

妄想ラジオ風ブログ(10)

今日の1曲目:Break On Through (To The Other Side) / The Doors こんばんは、渋谷陽一です。全国0局ネットでお送りしています、妄想夜電波、じつに前回から一年半ぶりのオンエアになります! この一年半のあいだに公私ともににいろんなことがありました…

すまほ

来年の3月でガラケーが使えなくなるとさんざん脅されて、とうとう観念してスマホに変えた。 とはいっても普段iPadを使っているので、iPhoneはそれまでのガラケーと同じ使い方しかしないつもり。 どうもああいうケイタイショップで職員の説明を聞いてい…

近松秋江

小島信夫の『私の作家評伝』で近松秋江が読みたくなり、青空文庫で読める『別れたる妻に送る手紙』、『うつり香』、『黒髪』、『狂乱』、『霜凍る宵』を読む。 秋江のこれらのシリーズ物は、俗に「ストーカー小説」とも呼ばれるが、何か江戸以前の古典文学を…

島崎藤村と小島信夫

小島信夫『私の作家評伝』は、漱石や鴎外はじめ日本の近代作家について論じたもので、とても読みやすく面白い。小島信夫本人がどこかで書いていたと思うが、「かゆい所に手が届くような」、玄人が読んでも唸るような(たぶん)内容になっている。 中でも興味…

What is Beauty for language ?

今読んでいる千石英世『小島信夫: 暗示の文学、鼓舞する寓話』という本の中で、小島信夫の息子がアル中になって記憶を失い、後妻となった愛子さんが健忘症になってしまった遠因は、小島信夫が私小説作家だったからではないか、と書いていて唸った。 青木健と…

謎解き亀山郁夫

水村美苗『新明暗』を読んで思い出したのが、亀山郁夫『新カラマーゾフの兄弟』である。 言わずと知れた、ドストエフスキーの大作『カラマーゾフの兄弟』を、現代日本社会を舞台にリメイクした問題作だ。 『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーの死に…

魂のこと

『続明暗』を評して、作者が親しんできた日本近代文学、中でも菊池寛の『真珠夫人』のような通俗小説になってしまっている、という小論を読んだ(渡邊澄子『男漱石を女が読む』)。いくつかの具体的な個所について、漱石なら決してそんな書き方はしないとい…

Black and Blue Continued

小島信夫の『漱石を読む』という辞典のようにぶ厚い評論集(水声社)を読むために漱石の『明暗』を読み返し、さらに水村美苗『続明暗』というのも読む。 『続明暗』は、『明暗』の伏線をすべてきれいに回収するような形で、物語をうまくまとめてある。著者自…

続明暗

小島信夫『漱石を読む』から水村美苗『続明暗』についてコメントしている部分を抜粋する。 『続明暗』という小説を、ある女の人が書き上げ、それが本にもまとまったので、読むつもりであるが、締め切りがきてしまったので、間に合わなかった。すくなからぬ人…

姪と餡

こじのぶ(小島信夫)の『漱石を読む』が読みたくなったので、ナツソー(夏目漱石)の『明暗』を(青空文庫で)読み返す。 以前読んだことがあり、確かこのブログに感想まで書いているのだが、内容について完全に忘れており、初めてのようにワクワクドキドキ…

レペゼンぼく

「抱擁家族」ってバンドがあるみたいだが、小島信夫の小説と関係あんのかな。ないことはないだろうと思うが。 二十世紀の魔術師と呼ばれるアルメニア人・Gの弟子として知られるロシア人・Pは、「どんなものでもよいから君が導師から学んでいる修練の具体的…

小島信夫の文法

『小島信夫の文法』(青木健著、2017年、水声社)という本を借りて読む。 著者は、一時期小島信夫の編集者として接し、後に「小島信夫賞」の運営や選考にも係わり、「小島さんの10年余りの晩年、近くで濃密な時間を過ご」した。詩人で作家でもある。2019年…

死後の世界

物心ついたときから、死後の世界があるのかどうかが気になって仕方がなかった。 もし死んで何もなくなるのなら、生きている間に何をしようが「後は野となれ山となれ」で一向構わないということになるし、宗教のいうように天国と地獄というものがあって、善い…

精神世界遍歴

ぼくが大学に入学して東京に来た頃はバブルが弾ける前の最高の勢いにあったころで、出版業界もバブルだったのか、今なら出せないような様々な本があった気がする。 別冊宝島に「精神世界を読む」という特集号があって、本場からほとんど二十年遅れのニューエ…