INSTANT KARMA

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2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

あっちの話

三浦清宏『運命の謎 小島信夫と私』の最後に、小島信夫の没後に交霊会で小島の霊を呼び出してもらったという記録が載っている。 昨日も書いたように三浦清宏はスウェーデンボルグにハマってロンドンの心霊協会で一年間滞在し、その後も心霊に関する書物をい…

運命の謎

三浦清宏『運命の謎 小島信夫と私』(水声社、2021年)という本を読んだ。 小島信夫が「アメリカン・スクール」で芥川賞を取り、アメリカ留学しているときにアイオワ州のポール・イングル教授のセミナーで出会い、帰国後小島の国立の家に半年ほど暮らした。…

一万枚の日記

『六十一歳の大学生、父野口冨士男の遺した一万枚の日記に挑む』(平井一麥、文春新書、2008年)を読む。 『海軍日記』にも出てくる息子・一麦(かずみ)が60歳で勤務先を定年退職した後に、6年かけて父が生前書いていた一万ページに及ぶ日記をすべてワー…

海軍日記

「いよいよ状況が煮詰まって来た」などと呑気なことを言いながらこの十年ばかりやってきたが、いよいよ本当に(主に個人的な生活の面で)煮詰まってきた感がある。 これまでは「そのうち世の中がひっくり返るような、全部がご破算になるようなことが起こって…

『感触的昭和文壇史』

歳を取るにしたがって記憶の量が増えて行きメモリの容量が不足してくる。メモリ不足で脳の動作が遅くなる。それをリセットして常にクリーンアップしないといけない。そうすれば脳は年を取らず脳細胞が突然変異を起こすのだそうだ。作家で晩年痴呆症になった…

野口冨士男とか

坪内祐三が編集した十返肇という人の文芸評論を読んでいるが1914年(大正3年)生まれのこの世代の人は左翼が挫折したのを目撃して抽象的理想論や観念を信じなくなり、戦争はその認識を確認したに過ぎなかったと書いているのを読み、こういうことをはっきり書…

通俗とは

よくテレビの改編期にやる番組対抗のクイズ大会のようなお祭りに 「東京物語チーム」(原節子、笠智衆、杉村春子、香川京子)、 「浮雲チーム」(高峰秀子、森雅之、加東大介、岡田茉莉子)、 「用心棒チーム」(三船敏郎ほか)、 「仁義なき戦いチーム」(…

輪廻

プリンスはマイテとの間の亡くなった子についての多くの曲を書いた。 その一つが「Comeback」という曲で、それは「アミールの父親の声」だとマイテは感じている。 戻ってくる / プリンス・ロジャー・ネルソン 昼下がり、階段を上がっていると 優しい風が吹…

坪内祐三の沢木耕太郎批判に思う

坪内祐三は『文学を探せ』の中で沢木耕太郎の小説『血の味』をメッタ斬りしていて凄い。文芸春秋社の雑誌で書いているのがまた凄い。 「テロルの決算」が刊行された1978年に大学に入学した坪内は、沢木のノンフィクション作品の熱心な愛読者で、特に『敗れざ…

ツボちゃん

坪内祐三という名前を知ったのはいつだったろうか。 なんとなく以前から名前だけは知っていたような気がするし、水道橋博士の本の解説を書いたり、杉作J太郎と一緒に活動(?)したりして、サブカル関係の人だとずっと思っていた。 初めて彼の名前を意識し…

Mayte Garcia回想録(9)

2016年1月、マイテは風の噂に、プリンスの具合がよくないと聞いた。心配する周囲の人々を遠ざけているとも聞いた。 マイテは、共通の友人であるニコラス・ランディーを通して、彼の様子を直接見に行ってもいいか、そしてジーアを連れて行ってもいいかどうか…

Mayte Garcia回想録(8)

2011年に、アメリカのテレビ番組『Hollywood Exes』のレギュラー出演の仕事が決まった。それはリアリティー・ショーで、セレブの元妻を追いかけるという趣向の人気番組だった。Rケリーの元妻なども出演していた。 その仕事は、当時「多発性硬化症(MS)」と…

『麦秋』

(監督:小津安二郎、脚本:野田高梧、小津安二郎、出演:原節子、笠智衆、淡島千景他/松竹/1951年) 原節子の「紀子三部作」の二作目であり、一作目の『晩春』との対比で見ないと作品の真価は分らないので、以下『晩春』についてのコメントも頻出する。 …

Mayte Garcia回想録(7)

トミー・リーは魅力的な人だったが、前妻(パメラ・アンダーソン)との間に二人の子供がいて、仲良くやっていた。マイテはまだ自分の子供を欲していて、それが再婚を思い留まらせた。別れは悲しかったが、今でも良き友人同士で、プリンスが亡くなったときに…

Mayte Garcia回想録(6)

プリンスは1998年12月、スペインでマイテと二人で臨んだ記者会見の中で、「マイテとの結婚を無効にする」と一方的に宣言した。 事前に何も知らされていなかったマイテには青天の霹靂であった。もはや二人の関係が冷めてしまっていることは否定できないにせよ…

Mayte Garcia回想録(5)

マイテの回想録の「あとがき」には、ドラマチックにするために会話やシチュエーションを再構築した部分があると断りがあるので、彼女の回想は厳密な事実関係とはズレがあるかもしれない。 たとえば、マイテはプリンスが『エマンシペーション』のプロモーショ…

Mayte Garcia回想録(4)

プリンスは新作『エマンシペーション(解放)』のプロモーション活動をしなければならなかった。プリンスが今晩行われる彼のコンサートのために出かけると、がらんとした家で、マイテは死ぬことを考えた。 耐え難い痛みと高熱のために、医者を呼んだ。伝染病…

Mayte Garcia回想録(3)

医学書によれば、ファイファー(Pfeiffer)症候群2型とは遺伝子的病気であり、先天的な頭蓋骨や顔面骨(基本的に下顎を除く)の形成異常(クローバー型とも言われる)がおこり、脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸障害が伴う。また手および足…

Mayte Garcia回想録(2)

マイテの回想録によれば、プリンスはしばしばマイテに催眠術をかけて、トランス状態になったマイテと会話していたという。もちろんマイテもそれを望んでのことだ。スピリチュアルにハマっていたプリンスは、マイテが前世でエジプトの王女で、前世の自分と関…

Mayte Garcia回想録(1)

年に何度かプリンスを聴きたくなる時期があって、その時にはプリンスしか聴けなくなる。それ以外の時にはプリンスだけは聴かない。プレイリストにプリンスの曲は混ぜない。 よくプリンス入門には何を聴けばよいのかとか、「はじめてのプリンス」などを謳った…

Piano & a Microphone~Final Show~Atlanta Show 2~April 14, 2016

明け方の中途半端な時間に目が覚めたので、ようつべに上がっている最後のツアー(『ピアノ・アンド・ア・マイクロフォン』)の音源をiPadにイヤホンを差し込んで聞いた。 生前最後の演奏となったアトランタ公演のショー第二部と、ペイズリーパークにおける『…

『南の島に雪が降る』

加東大介『南の島に雪が降る』(ちくま文庫)を読む。 最近見た「あらくれ」「浮雲」(成瀬)、「河内山宗俊」「人情紙風船」(山中貞雄)、「小早川家の秋」(小津)などで印象的な演技を見せている俳優の書いた本として手に取ったが、その余りに凄まじい内…

『晩春』

(監督:小津安二郎、脚本:野田高梧、小津安二郎、出演:原節子、笠智衆、月丘夢路他/松竹/1949年) もはや何もかも語り尽くされた感のある古典的作品だが、個人的備忘録として感想を記す。 原節子が強烈。原演じる紀子の激情をまったく意に介さずスルー…

『人情紙風船』

(監督:山中貞雄、脚本:三村伸太郎、出演:中村翫右衛門、河原崎長十郎、霧立のぼる他/PCL/1937年) この映画は最初から最後まで印象に残るシーンに事欠かないのだが、中でも、〈雨の中を佇む浪人・海野又十郎〉と、〈宴会の席で爆笑する海野又十郎〉…

『河内山宗俊』

神保町シアターで山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壺』[4Kデジタル復元・最長版] と『河内山宗俊』[4Kデジタル復元版] を観た。この上映のあることを知ったのは先日岩波ホールで見つけたパンフレットで、山中貞雄監督のことは図書館で借りた坪内祐三『…

山中貞雄

坪内祐三によると、普通の映画好き百人に、日本の映画史上で最高の映画監督は誰かと尋ねれば、一位はたぶん黒澤明で、本格的な映画好き百人になると、小津安二郎だが、さらにマニアックな映画好き百人になれば、一位は、きっと、山中貞雄だろう、という(『…

痩せた雄鶏

今日読んだ尾崎一雄の『痩せた雄鶏』という小説が京都大学の入試に使われたらしい。 五十になった作家に、妻と三人の子供がいて、自らは病弱で始終床に臥せっている。病気になり、どう考えてもあまり長い命ではない、という事実にぶち当たったとき、彼は初め…

2021.1.3

正月の三が日もあっという間に終わりだ。今日は朝からずっと頭痛で鎮痛剤ばかり飲んでいる。散歩がてら本屋に出かけて「ユリイカ」の高峰秀子特集を買う。二〇一五年に出たもの。大谷能生の書いた日本の音楽批評史みたいな本も買おうかと思ったがよく考えた…

2022.1.2

年末年始はあっという間に過ぎ去る。近所の神社でおみくじを引いたら「苦労もなくだらだら過ごさず堅実にやれ」と書いてあった。商売では損失は出ないそうだ。都合のいいことだけは信じることにする。 今日の夕方BSで放送していた黒澤明の特集番組を見た。高…