INSTANT KARMA

We All Shine On

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2022.3.31

斉藤紳士さんが安岡章太郎の「陰気な愉しみ」が面白いと言っていたのでそれの入っている文庫(「質屋の女房」)を借りる。「私小説ハンドブック」(秋山駿・勝又浩 私小説研究会編)も。 元々その図書館に行ったのは、清水翔太の昨年に出た最新作「HOPE」のC…

third time's the charm

「三度目の、正直」という映画を見てきた。 「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー賞(国際長編作品賞)を受賞して現在話題沸騰中の濱口竜介監督による2015年の作品「ハッピー・アワー」の共同脚本を担当した、野原位監督の劇場デビュー作。 「ハッピーアワ…

No Tomorrow

京都の古書店で注文した「岡田睦作品集」(宮内書房)が届いた。詳細な年譜や、短期間同居するなど〈弟子〉として遇された方のインタビューが掲載されていて、充実の一冊。 年譜を見ると全集が編まれてもよいほど多くの小説やエッセイが残されている。 『乳…

Proto-Image of the People

完本 情況への発言 | 吉本 隆明 |本 | 通販 | Amazon 購読者による予約金以外の資本に頼らずほぼ独力で自分の書きたいことを書く場所を築き、いかなる組織や党派にも依りかからず、いつも完全に独りで、社会的地位や権威や社会的評価や名声の後押しを受けて…

Statement On Present Situation

図書館で吉本隆明「完本 情況への発言」、勢古浩爾「最後の吉本隆明」、松崎 之貞「「語る人」吉本隆明の一念」、加藤 典洋、高橋 源一郎「吉本隆明がぼくたちに遺したもの」を借りる。「情況への発言」では、柄谷行人や蓮実重彦、浅田彰らを口汚く罵ってい…

House of Demonish Lady

移転のために昔のブログを読み返しているうちに、鳥居みゆきの最近の活動を知りたくなって、彼女がやっているYouTubeチャンネルを見てみたら、なかなかすごかった。 心の中に闇を抱える芸人たちと語り合ったり、心の中に闇を抱える視聴者たちの悩みに答えた…

Blog and me

teacupに好きな音楽やらタレントやらについて雑感を書き連ねるブログを気が付いたら16年くらいやっていたのだが、もうすぐサービスを終了するというので、いろいろ(というほどいろいろでもないが)調べた挙句、この「はてなブログ」に過去記事を移転するこ…

Marilyn Monroe No Return

「モンローが死んで、この世からやさしさが失せた。モンローが死んで、この世からぬくもりが失せた。モンローが死んで、この世からほほえみが失せ、モンローが死んで、この世はとわの闇にとざされた。だけど、かわいそうなモンロー、いつもお前の心は冷え切…

Private Requiem

吉本隆明『追悼私記』を読み終える。今までに読んだ吉本隆明の本(詩集除く)で最も抒情的で〈エモい〉文章が収録されている。追悼文でありながら故人への批判になっていたり、社会的には無名に等しい知人の生涯について立ち入った考察をしていたり、「あと…

Without You

松村雄策の死について早川義夫が何かコメントしていないかと思って公式サイトを見るが、特に更新されていなかった。逆に心配になる。 昨日からまたドアーズを聴いている。今日はジャックスを聴こうと思う。 松村雄策の音源はサブスクにはないし、CDも持って…

Nowhere to Run

松村雄策が愛した六十年代のロックについて、彼自身がどう考えていたかは分からないが、僕にとってあの頃のロックは、本当に世界を変革するような出来事だった。それは単なる音楽ではなかった。 松村雄策もこう書いている。 「一昔前の少年時代、レコード・…

No Spring

最近朝起きても眠気がとれず、スキっとしない。PCの動作が遅いのに日々イライラしているが、自分の頭も起動が遅くてバグっているような感じがする。 去年ワクチンの2回目を打った後からこういう症状が出始めている気がする。今週の金曜日には3回目を打つ…

Private Requiem

川端要寿『堕ちよ!さらば―吉本隆明と私』、 橋爪大三郎『永遠の吉本隆明』、 吉本隆明『追悼私記(完全版)』、 同『フランシス子へ』、 同『開店休業』(長女ハルノ宵子との共著) を借りる。 吉本隆明が死んだのは、ちょうど10年前、2012年3月16…

Very Good Day To Die

戦禍によってひき離され 戦禍によって死ななかったもののうち わたしがきみたちに知らせる傷口がなにを意味するか 平和のしたでも血がながされ 死者はいまも声なき声をあげて消える かつてたれからも保護されずに生きてきたきみたちとわたしが ちがった暁 ち…

誰もいない文学館

街で青い護送車を見かけるたびに、賢太の「春は青いバスに乗って」というリリカルな短編を思い出す。 賢太が「小説現代」に連載した<誰もいない文学館>というエッセイは単行本化されていない。作家としてだけでなく古本コレクターであり読者としても超一流…

雨滴は

〈西村賢太追悼〉と銘打った『文學界』四月号を買う。 〈追悼〉とはいっても、〈特集〉ではなく、連載中の「雨滴は続く」(最終回)の手書き原稿の写真一枚と、連載分以外に、田中慎弥と朝吹真理子の追悼文が載っているだけの、何とも慊りない内容であった。…

Lord’s Prayer

僕が中高生の頃、夕食はほとんど毎日家族三人で同じ食卓に就いていた。母親は専業主婦で、父親も毎日定時に帰ってくる人だったので、夜七時には夕食ができていた。僕も学校は帰宅部だったので学校のある日も毎日六時頃までには家にいた。 父親は一人で晩酌し…

Memoria

アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作映画「メモリア」をヒューマントラストシネマ渋谷で見た。 南米コロンビアを舞台に英語とスペイン語が飛び交うが、映画の印象はこれまでのアピチャッポン映画そのもの。必要最小限の登場人物と必要最小限のカット数。…

Tales of Moonlight and Rain

溝口健二監督『雨月物語』(1953)をAmazonプライムで見た。 今更シネフィルを気取るつもりもないが、勉強のために。 考えてみれば、まだ溝口や成瀬の代表作をほとんど見ていない、ということは、これから見る楽しみがあるということで、とても贅沢なことか…

Tokyo Story

濱口竜介監督が「ユリイカ2016年2月号 特集=原節子と〈昭和〉の風景」に「『東京物語』の原節子」という文章を寄稿していて、これがなかなか静かな熱量の籠ったいい文章であった。「静かな熱量」というのは濱口監督の映像作品にも共通して受ける感銘である…

A death of a dictator

独裁者の最期というのは、周囲の人間が誰一人信用できなくなって猜疑心に憑りつかれて精神を病んでしまうというのが多い。滑稽なのが有名なスターリンの最期で、自室で脳溢血で倒れたが周囲の医師を始め部下の誰一人として下手に手を出して粛清されることを…

後藤明生の『挟み撃ち』を図書館で借りて読んでみた。

職場のPCをWindows11にアップグレードしてからネット接続はじめ動作が重くなって仕事にならない。一日の大半をPCに心の中で悪態をつきながら過ごしている。セキュリティーとかファイヤーウォールとかの関係でチェックが入るためなのかもしれないが、あらゆる…

Ribbon感想(若干ネタバレあり)

一度は芸能界から抹殺され干されかけた女優が(今でも地上波ドラマには出ることができない状態が続いている)、自ら監督・脚本による主演映画を撮影し、全国で劇場公開するに至ったということはそれ自体が大変な偉業であると思う。 岩井俊二や樋口真嗣をはじ…