INSTANT KARMA

We All Shine On

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

波の音

入院して四日目の夜、看護婦たちが用があり、私だけが父の枕元に立っている短い時間があった。父が私の顔に目を向けていた。不意に突きあがるような思いが胸に来て、私は父の頬に顔を寄せると、“父が好きだ”と言った。”好きでたまらないのだ”と言った。たま…

ブレインフォグと川端康成と女たちと

最近眠りが浅くなっているのか、朝起きてからもずっと頭がぼんやりしてスッキリしない。ブレイン・フォグBrain Fogというのはこういうことを言うのかと思ったりする。 この状態を初めて自覚したのは去年の秋ごろ、コロナのワクチンの二回目を打った後のこと…

『ツェッペリン飛行船と黙想』事件(2)

前回、暁の孫のブログに依拠して書いた、2012年5月23日の話し合いの模様が、「あかつき文学保存会」会報に会側の視点から書かれているので引用する。 「あかつき文学保存会」会報第五号に掲載された「解散の経緯」より 「上林曉の文学資料を公開し保存する会…

『ツェッペリン飛行船と黙想』事件(1)

上林暁の未発表原稿を集めた『ツェッペリン飛行船と黙想』という書物をめぐっては遺族と出版社の間で裁判になり、暁の娘の子(孫)が作成したブログにその経緯が書かれている。 過去の記事を遡って読んでみたが、時系列を整理すると以下のようになる。(敬称…

私小説はネットで発表

文芸評論家で私小説作家でもある小谷野敦氏は、『私小説のすすめ』という本の中で、これから私小説を書こうとする人はネットに書くのがいいと書いていた。つまり私小説などというものは売れないので商業出版で出してくれるようなところはないから、どうして…

Zeppelin and Meditation

サワダオサムの「独断的上林暁論」が面白かったので、「わが上林暁―上林暁との対話」も借りる。こんなに面白い本が読まれないのは勿体ない。まあ上林暁自身もうほとんど読まれない作家だから仕方ないか。太宰治好きの又吉直樹が紹介して多少知名度が上がった…

Oops I pushed by luck

河瀨直美監督の東京2020オリンピック映画の音楽を藤井風が引き受けたことについて、やはりファンの反応は二分されているようだ。 歴史的な大仕事を任されたことに対して大歓迎の声がある一方、オリンピックという国家プロジェクト、しかもとりわけ批判の大き…

The Sun and the Moon

河瀬直美が総監督を務める公式映画『東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B』の予告編が公開。メインテーマ曲は藤井 風が担当することも明らかになった。 表舞台に立つアスリートを中心としたオリンピック関係者たちを描いた『東京2020オリンピック SIDE:A』…

上林暁との対話

上林暁は仕事で馴染みのある人物に雰囲気が似ていて好感を持つ。安岡章太郎の顔は不快な人物を思い出させる。加納作次郎は名前がよくない。こんなことは作家当人には何の関係もないことで、不当極まりない先入観にすぎないのだが、生理的な反応なのでどうし…

人気者でいこう

藤井風が12歳のころから投稿している演奏動画と、兄と一緒にsolakazeというアカウントで投稿している演奏動画で公開されているカバー曲を一覧にしてみて、びびった。 何がって、昭和歌謡の多さに。 本アカ(Fujii Kaze名義)で投稿しているカバーは、洋邦含…

NO SANA NO LIFE

はてなブログになってから初のカミングアウトですが、 私のTWICEの推しは〈さーたん〉ことサナSANAちゃんです。 どうかお見知りおきを。 アメリカツアー中のvlogでカップラーメン啜ってる動画に涙が出たよ。 本人はおいしそうに食べてたけど・・・ この週末…

Not Particularly

MUSICA「藤井風8万字インタビュー」の中で面白いと思った発言を挙げていくと百三十個以上出てくるので、その中から数点だけ絞り込んでみたい。 「もうええわ」という曲について、「手放す」ということがテーマなのでは、と尋ねられたときの答え。 何かを手…

A man loved by no one

風野春樹『島田清次郎 誰にも愛されなかった男』という本を読んだ。とても面白い、力作評伝だった。島田清次郎は誇大妄想狂気味の自己愛性人格障害のDV常習者であり、ほとんど同情の余地がないのだが、興味深く読み進むことができたのは、筆者の精緻な調査に…

KAZE MUSICA

「MUSICA」2002年5月号に載っている「藤井風8万字インタビュー」を読みたくて早速購入。 気になる箇所をマーカーでチェックしながら一気に読む。こんなにミュージシャンのインタビューを熱心に読んだのは、「ロッキン・オン・ジャパン」でエレファントカシ…

ウェシェゲロベベアン

亮二はビートルズを聴いていたのだ。真剣にジョン・レノンを、五年間聴き続けていたのである。なにかがあるというのなら、このまま黙ったままで卒業するわけにはいかなかった。 松村雄策「苺畑の午前五時」 松村雄策のイターナウ「今がすべて」のCDが届いた…

身軽生活

昨日は一寸頭に血が上って政治的な時事ネタめいたことを書いてしまったが、基本ああいうのはどうでもいいと思っていて、今話題の園子温にしても河瀨直美にしても映画監督としての本業以外のところでの話題にはあまり触れたくもない。 園子温については鈴木砂…

good and evil

河瀨直美という映画監督が、今年の東大の入学式で祝辞を読み、その内容が話題になっているという。 祝辞の全文は www.u-tokyo.ac.jp で読むことができる。その中で河瀬氏はこう述べている。 例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれども…

Eternal Now

例えば、全く何もしないでもいいというような休みの日が一日出来たとしたらならば、いったいどのように過ごすか。先ず、押し入れの奥にしまいこんである、莫大な量のビートルズの写真の切り抜きを持ち出してくる。雑誌のビートルズ特集号も出す。ビートルズ…

追悼松村雄策を読む

「ロッキング・オン」の最新号で松村雄策の追悼記事が載るというので読みたくなった。本屋で買いたいと思ってもなかなか町中に本屋というものがない。職場の近くにあった本屋も去年の今頃に閉店してしまった。 仕方がないので新宿の紀伊国屋書店に出向く。こ…

現代社会の理論

社会学者の見田宗介が亡くなったという。 名前を知っている程度で、著書を読んだ記憶はない。この人から連想するのは、インドの〈セックス・グル〉と呼ばれたオショー・ラジニーシのコミューンを訪問したり肯定的な書評を書いたりしていたということくらいか…

Others

昨日、「吉本隆明と小島信夫の対談は予想通りよく分からない話に終始。」と書いて終わったが、実はあのときは半分しか読んでいなかった。 今日、最後まで読んでみて、やはりよく分からなかったのだが、一か所だけ小島信夫の発言でハッとするところがあったの…

アハ体験

昨夜は十一時過ぎに寝て、夜中の三時前に目が覚め、そのまま目が冴えて眠れなくなった。トイレに立ち、猫が二階から降りて寝室に入ってきて、小一時間iPadを見たりして時が経つのを待ち、浅い二度寝をし、ベッドを出るのがかなり辛かった。 誕生日だが誰も祝…

暴力と選択

園子温監督の過去の行状が今になって告発の対象になっている。 園監督だけでなくこのところ映画業界における性被害の実態を明らかにする動きが目立っていて、日本版metoo運動が本格的に始まったのかとも思わせる。 「業界では前から有名だった」とか「知って…

当事者性とリアリティ…

どうせ誰も読んでいないブログだから何の気遣いもなく好き放題書いてしまうのだが、「ドライブ・マイ・カー」の韓国手話のシーンが批判を食らってるという。 批判の内容を乱暴にまとめると: 実際に手話を使う立場から見て、手話が消費されていると感じた。…

Still Life

BIGBANGが4年ぶりカムバック。K-POPはほとんどヨジャしか聴かないが、ナムジャグルではBTSよりEXO、EXOよりBIGBANGが好き。ダンスやビジュアルより曲重視。 BIGBANGはスンリがやらかして5人が4人になってしまったが、なんだかTOPも去っていくような気配を漂…

Foxy Eye

〈キツネ目の男〉こと宮崎学が亡くなった。 彼の本を一時期よく読んでいて、元国家公安委員長の自民党議員・白川勝彦と組んで選挙に出た時にはカンパしたり街頭演説を見に行ったりもした。 メディア弾圧につながるといって個人情報保護法に反対したり、出自…

As Time Goes By

世界はすべて ひとりの太郎のためにある 世界はすべて ひとりの花子のためにある おほきな声でそれを言へばおれは殺されてしまふ けれどほんたうのことは/結局ほんたうだ 正義の発端はおれにある/人道の発端はおれにある それを知らないものをおれは信じな…

Gamble

昔「日本で最も歌唱力が過小評価されている歌手」と山下達郎が評したことでその実力が認知され、いまや誰もが「日本で一番歌のうまい歌手の一人」として認知している元・安全地帯のボーカリスト・玉置浩二と同じように、今「日本で最も過小評価されているミ…

dismal pleasure

斉藤紳士さんが安岡章太郎の「陰気な愉しみ」が面白いと言っていたので読んだが確かに面白かった。 戦争中に軍務で負傷した男が、毎月役所に出かけて傷病手当金をもらうというだけの話なのだが、そのことだけで一つの作品を成立させているのがすごい。 どこ…