INSTANT KARMA

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ドストエフスキー

ドストエフスキーの「最後の主体」

東浩紀の「観光客の哲学」が素晴らしかったので、「訂正可能性の哲学」も買うことにして、4月18日の吉田豪とのイベントもオンライン観覧を申し込んだ。 twitcasting.tv 18日までに「訂正可能性」を読んでおきたい。 (吉田豪の「聞く力FINAL」はもう読…

聖夜の話

キリストのヨルカに召されし少年 フョードル・ドストエフスキー 神西清訳 それは、ロシアのある大きな町であったことだ。その晩は、クリスマスの前夜で、とりわけ、寒さのきびしい晩だった。ある地下室に、ひとりの少年がいる。少年といっても、まだ六つにな…

Blog and me

teacupに好きな音楽やらタレントやらについて雑感を書き連ねるブログを気が付いたら16年くらいやっていたのだが、もうすぐサービスを終了するというので、いろいろ(というほどいろいろでもないが)調べた挙句、この「はてなブログ」に過去記事を移転するこ…

謎解き亀山郁夫

水村美苗『新明暗』を読んで思い出したのが、亀山郁夫『新カラマーゾフの兄弟』である。 言わずと知れた、ドストエフスキーの大作『カラマーゾフの兄弟』を、現代日本社会を舞台にリメイクした問題作だ。 『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーの死に…

レーニンが愛した女

ウラジミール・イリイッチ・レーニン(1870〜1924)と言えば、鋼鉄のような意志をもって革命事業を遂行し、革命に殉じた人物という印象が一般的だと思うが、ソ連崩壊後、彼がイネッサ・アルマンドという女性に充てた手紙と彼女の返信が公開され、レーニンが…

ドストエフスキー 転回と障害

福田勝美著『ドストエフスキー 転回と障害』(論創社)という本を買って読む。 今年の7月に出たばかりの本だが、今までに読んだドストエフスキー論の中で一番しっくりくる部分が多かった(もっとも、当たり前のことだが、すべての箇所に同意できたわけでは…

大知識人

この数週間は『悪霊』にすっかり憑りつかれていて、今は米川正夫訳と江川卓訳と亀山郁夫訳を頭から順番に読み比べを開始した。 どの翻訳も一長一短だが、今のところ(第1部の途中)米川正夫訳が一番しっくり来る。 江川卓訳はいいのだが、ステパン氏のフラン…

貧しき人びと

車中で『貧しき人びと』を読む。最後の頁だけは読んでいると号泣しそうで怖かったので読まなかった。あとで独りになって読んだらやっぱり号泣した。 世間から侮蔑の目で見られている小心で善良な小役人マカール・ジェーヴシキンと薄幸の乙女ワーレンカの不幸…

リベラリストの死

『悪霊』の登場人物の中で、最もよく描けているのは、スタヴローギンや他の人物よりも、ステパン氏であるという説は有力だ。 西欧(フランス)かぶれのリベラリストだが、偽善的で腰の座っていない姿勢を、自らの教え子である、より過激な自由思想をもつ下の…

永久調和の瞬間

キリーロフは、自分は既に救われたと信じている。 なぜなら、究極の真理を悟ったから。あとは、その具体的実践の問題が残るだけだ。 オウム真理教の内部にカメラを持ち込み、信者たちの姿を曝け出した「A」「A2」というドキュメンタリー作品(森達也監督…

只の虚無

『悪霊』について、しつこく書く。 スタヴローギンは、この物語に登場する時点では、既に精神的な廃人になっている。 小説の中の彼は、幻となった「告白」の章を除いては、まるで亡霊のような存在感だ。彼は、幼少時に父が不在で、根無し草のようなステパン…

「悪霊」の謎

清水正は『「悪霊」の謎』の中で、作中で物語の執筆者という設定になっているアントン(G)について、ステパンの念友だったとか、ピョートルと同じ任務を果たしていた政府のスパイであったとかのトンデモ説を真面目に論じていて、急に萎えた。 そういう読み…

Demons

『悪霊』読了。 これも30年ぶりの再読だが、やはり当時と印象がだいぶ違う。 今回は、ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーの最期のくだりが涙なしでは読めなかった。 加賀乙彦という作家の『小説家が読むドストエフスキー』という本(集…

理由なき殺人

理由なき殺人には、そもそも、目的というものがない。金品奪取は、理由なき殺人を現実化=実現するための、見せかけの口実、いわば偽りの理由にすぎない。だから、彼は、盗品が何であるかを知りたくもなければ、財布の中身を見もしないのである。 では、何の…

未成年

ドストエフスキー『未成年』をひとまず読了。 他の長編とは毛色が違って、読み通すのが少し大変だった。 この独特な文体の感覚に一番しっくりくるのが個人的には岡村靖幸『青年14歳』という曲ではないかという気がする。 山城むつみという評論家は、『未成…

白痴

「この小説(『白痴』)は、その価値を知る者にとっては、何千ものダイヤモンドと同じ価値がある」 ―レフ・トルストイ トルストイは当然知ったうえで言っているのだが、この小説には数千のダイヤモンド以上の価値があり、それは比較になり得ない。 10万ル…

ナスターシャ

『白痴』を読み始めた。 自分の中では、ナスターシャ・フィリポヴナはナスターシャ・キンスキーのイメージだったのだが・・・ 実際彼女の名前は父親(クラウス・キンスキー)が『白痴』にちなんでつけたのだとか。 彼女の姉は父親から性的虐待を受けていたら…

ドストエフスキー体験

自分がドストエフスキーを初めて読んだのは18歳のときだが、当時のノートにはこう書きつけてある。 とにかく圧倒的におもしろく、最後までぶっとおしで一気に読み通した。とにかく圧倒的におもしろい。つべこべ言う前に、とにかくおもしろい。小説とはこん…

スヴィドリガイロフ

図書館で『「罪と罰」を読まない』という本を読んで中々面白かった。 作家4人が「罪と罰」を読まないまま想像でああだのこうだの喋っている本なのだが、最終的に読んだ後のスヴィドリガイロフ(スビ)についての分析が自分とほぼ同じだったので共感した。 …

罪と罰

ドストエフスキーのラスコーリニコフの内面を一度でも追体験した者は、父殺しの次の夜のミーチャ・カラマーゾフの訊問を追体験した者は、あるいは『死の家の記録』を追体験した者は、もはや、かたつむりのように俗物根性と自己満足のエゴイズムの殻の中へ隠…

ドストエフスキー年譜

この週末は暑さのせいで一歩も外に出ず、ドストエフスキーを読んで過ごす。 新潮社の「ドストエフスキー全集 別巻・年譜」を一通り読む。これは、ドストエフスキーの先祖から没後の動きに至るまで、毎日の出来事をまとめたL・グロスマンによる1930年代の仕…

カラマーゾフあれこれ

ドストエフスキーについては、21世紀になって亀山郁夫が「新訳」を発表し、たいへん売れたらしい(らしい、というのはリアルタイムでは知らず、ネット知識でしかないため)。 そして、この亀山「新訳」については、研究者からかなり批判の声があるようだ(よ…

カラマーゾフの兄弟

暑いので、外に出ず、『カラマーゾフの兄弟』とその解説書を断片的に読みながら過ごす。 読むたびに、ドストエフスキーの作品の中には小説の中で表現できることのすべてが表現されていると感じる。最も高貴なことから最も卑俗なことまで。最も深刻なことから…

スタヴローギンの顔

「悪霊」より、仮面のような顔のスタヴローギン 「すばらしい。赤ん坊の頭をぐしゃぐしゃに叩きつぶす者がいても、やっぱりすばらしい。叩きつぶさない者も、やっぱりすばらしい。すべてがすばらしい。すべてがです。すべてがすばらしいことを知る者には、す…