INSTANT KARMA

We All Shine On

西村賢太

自滅覚悟の一踊り

とりあえず西村賢太の<一私小説書きの日乗>シリーズの既刊本の中から、引っかかる個所をすべて抜き出すところから始め、2019年11月まで来た。だが一、二度読んだだけでは素通りした箇所があるかもしれないので、眼光紙背に徹す為には、最低でも五回は回さ…

日乗

週末は、西村賢太「一私小説書きの日乗」シリーズの分析作業に没頭。 テーマは、死の前年に書かれた中編「蝙蝠か燕か」の中で明かされた女性の痕跡を、日記の中から、暗号を解読するかのようにしてあぶり出すこと。 根が覗き見体質にできてる自分は、こうい…

大きなクジラ

『疒の歌』の解説だけ先に読む。 映画「苦役列車」の監督・山下敦弘が書いている。西村賢太の死後に書かれたもの。 「苦役列車」はいうまでもなく芥川賞受賞作で、西村の最も有名な作品である。 しかし前にも書いたように、ぼくはこの小説をあまり高く評価し…

祀り

西村賢太が終わらない。終わらせてくれない。 今日発売の「ヤマイダレの歌」(新潮文庫)を買う。 その前に読まないといけないものが色々ある。 「日乗」シリーズの詳細な分析も自分のためのメモとしてこれからやるつもり。 本格的な西村賢太研究書が出る前…

Raindrops keep fallin'

西村賢太「雨滴は続く」一度目読了。 読み終えるのが勿体ないと思いつつ、頁を繰る手が止められなかった。 これが西村賢太文学の到達点、と思った。 北町貫多(西村賢太)が2004年(平成16年)7月に同人「煉瓦」に発表した小説「けがれなき酒のへど」が同年1…

憤怒の章

何だか西村賢太のためのブログみたいになってきたが、今日は『一私小説書きの日乗 憤怒の章 』(角川文庫)を買った。 ページ数は第一巻の方が多いのに、そっちは660円(税別)でこっちは1000円以上するのはどうしてだろう。何の便乗値上げだ。もう賢太のた…

Tears

今日は一日出張で疲れた。体力の衰えを感じる。それでもまだまがりなりにも半日歩き回れるだけマシだろう。あと十年もしたらどうなるのか。 出張先で西村賢太『一私小説書きの日乗』(角川文庫)買う。 昨日は移動中に読むために『形影相弔・歪んだ忌日』(…

『雨滴は続く』

5月25日発売と予告されていた西村賢太の新刊『雨滴は続く』が、都心の書店ではもう並んでいるとの情報を文藝春秋社のツイッターで目にし、早速仕事帰りに新宿の紀伊國屋書店で購める。 昨日の文庫といい、いいタイミングで賢太の本が手に入るのはうれしい。 …

賢太か鶴か

図書館で借りてきた「文學界」2021年11月号掲載の西村賢太「蝙蝠か燕か」を読み返す。 ユニクロにブリーフと靴下を買いに行った帰りに駅前の本屋に寄り、西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」(角川文庫)が復刊されていたのを見つけたので買う。 過去に何度か…

国会図書館革命

「本の雑誌」西村賢太追悼号の「北町貫多クロニクル」を見ながら、以前自分で作った時系列メモを修正する。手元にすべての本がないので、よく分からないところはそのままにする。 砂川文次「小隊」(文春文庫)を読了。三篇収録されているが、発表順に「市街…

日乗鬼語

近所の図書館で「風来鬼語 西村賢太対談集3」と「一私小説書きの日乗 不屈の章」を借りる。 藤野可織との対談の中で、「暗渠の宿」の中で三島賞がらみで現存のある老大家をディスってる部分があって、その原稿を見た矢野編集長に削除するよう示唆されたが、…

文学とは縋りつくもの

「本の雑誌」2022年6月号に掲載されている「藤澤清造全集内容見本」を眺めて、改めて賢太の藤沢清造に対する尋常ならざる思いの深さに圧倒された。 内容見本に寄せた文章(「藤澤清造全集』編集にあたって)の中で「この全集さえ完結出来たら、もう、あとは…

結句、西村賢太

「本の雑誌」2022年6月号は、「特集 結句、西村賢太」という永久保存版。 ツイッターで発売を知り、本屋に走る。焦りすぎて売り場で少し迷って購入。分厚い。いつもの倍くらいページが多い気がする。 冒頭に「藤澤清造全集内容見本全掲載」がきて、いきなり…

誰もいない文学館

街で青い護送車を見かけるたびに、賢太の「春は青いバスに乗って」というリリカルな短編を思い出す。 賢太が「小説現代」に連載した<誰もいない文学館>というエッセイは単行本化されていない。作家としてだけでなく古本コレクターであり読者としても超一流…

雨滴は

〈西村賢太追悼〉と銘打った『文學界』四月号を買う。 〈追悼〉とはいっても、〈特集〉ではなく、連載中の「雨滴は続く」(最終回)の手書き原稿の写真一枚と、連載分以外に、田中慎弥と朝吹真理子の追悼文が載っているだけの、何とも慊りない内容であった。…

岡田睦

西村賢太と坪内祐三の対談で知ったもう一人の作家が、岡田睦(おかだ・むつみ)だった。 1932年生まれで、慶応文学部を卒業し、家庭教師などをしつつ黒田壽郎、黒田美代子、古屋健三らと同人誌『作品・批評』を創刊、『三田文学』などに小説を書き、1960年「…

さようなら

改めて西村賢太の人生を振り返ってみると、彼は生涯(特に後半生)を通じて、非常に充実した作家活動を行っていたことが分かる。 21歳の時に田中英光全集を読み、27歳で『田中英光私研究』を自費出版している。この冊子は29歳の第8集まで刊行された。独力で…

哀悼 西村賢太

一銭にもならない西村賢太の追悼をブログに書き続けている。事務所のパソコンを使ってそんなことばかりしている。公務員だった頃から内職の癖は止まない。学校に通っていたときには内職はしたことがなかったのだが、大学に入ってからすべてが狂った。どうや…

西村賢太

西村賢太の小説にハマったのは去年の三月末からだから、まだ一年も経っていない。図書館で「どうで死ぬ身の一踊り」を借りてその面白さに目覚めたのが最初だった。面白い小説を探して芥川賞全集などを読んでいて、どれも退屈でウンザリしていたときに、西村…

一私小説書き逝く

都電の線路を足ばやに横ぎり、ガード下をぬけたところでもう一度振りむいてみたが、それと気になる人物や車輛はやはりなかった。根が小心者にできてるだけ、最後に吐き残した暴言のことで連絡を受けたその店の者が追っかけてきはしまいかとヘンに気にかかっ…

虚無だね。虚無しかない。

だけど、この頃は死ぬというのはどんなことかなとばかり考えるね。やっぱり死にたくないね。誰でもそうだろうけど。 「死線を超えて」にも書いたけど、意識がなくなったら来世なんかありっこないからね。僕は来世というのは絶対にないと思う。 ただ、死んで…

Of Beauty

『文學界』の最新号に西村賢太の創作が載っているのを読んだ。連載小説以外の読み切り中編は久しぶり。ここ数年の生活状況を交えつつ、ライフワークである藤澤清造全集発刊への決意を改めて表明。コロナ禍における苦労話や腰痛話、芥川賞後に七年間連れ添っ…

西村賢太備忘録(3)

<秋恵以後> 「膣の復讐」(『歪んだ忌日』収録)「週刊ポスト」2011年12月2日号 十月、秋恵に去られたことを思い出す。あの日以後暫く色欲は失せていたが、いよいよ寂しさの極みに立ったことを痛感した貫多は、秋恵の復讐にいつまでも屈しているこの状態も…

西村賢太備忘録(2)

<秋恵もの> 「暗渠の宿」(『暗渠の宿』収録)『新潮』2006年8月号 34歳(平成13年2001年9月)。新宿一丁目の八畳一間の「豚小屋」を出て秋恵(表記はまだ「女」)と同棲するためのアパートを二人で探すも、保証人やら収入証明やらを求められ、中々条件に…

西村賢太備忘録(1)

西村賢太の私小説を時系列に並べたメモ。個人的な備忘録で、随時訂正更新予定。 <秋恵以前> 人糞ハンバーグ或いは「啄木の嗟嘆も流れた路地」(『文學界』2020年2月号)単行本未収録 中学卒業の二日後から鶯谷のアパート住み始め、そろそろ二か月が経とう…

どうで、ぼく、根がデオドラント志向

西村賢太の『どうで死ぬ身のひと踊り』を図書館で借りて読んだら滅法面白かったのでブックオフで『小銭をかぞえる』も買って読んだ。 同棲相手とのDVがらみの愛憎模様を作者の昭和初期の私小説作家・藤澤清造への偏愛ぶりを織り交ぜながら描く私小説。男の情…

週末に読んだ本

「交通誘導員ヨレヨレ日記」柏耕一 うちの息子が交通誘導員のバイトを始めたので読んでみた。著者は最底辺と自虐的でキツめのエピソード中心に書かれているので大変そうに思えるが息子の話だと必ずしもすべての実態を反映しているわけではないようだ。例えば…