INSTANT KARMA

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Distance

是枝裕和監督の2001年の映画『Distance』を見た。

オウム真理教事件を題材にしたドキュメンタリー・タッチ・ムービー。

ドラマ的な手法を意図的に排除し、ドキュメンタリー的な映像でつくられている。

例によって映画そのものの出来はあまり問題ではない。強いていえば、テーマと切り口と手法は興味深いが、描き方がいまひとつ浅い。加害者の遺族という立場から見えてくる世界に現実感がない。少なくとも僕はリアリティを感じなかった。

何より、映画の中心的存在である「教団」や「教祖」があまりにも抽象化されすぎていて感情移入の余地がない。

・・・しかしこれ以上映画の内容について触れるのはブログの趣旨を外れるのでよす。

俳優たちのセリフや演技が即興風であまりに自然に見えるため、ここで見られる夏川結衣の姿は素に近いのではないかという錯覚にすら陥る。

この映画で夏川さんが最も印象深い演技を見せているのは、出家のために妻と子供を置いて出ていった夫が戻ってきたが、宗教にのめりこんで完全にあっち側に行ってしまった様子を見て、感情を爆発させ、追い出してしまう場面だ。 その切れ方が、見ていていたたまれなくなる。本当に妻に叱られているような気分になる。

居心地の悪いこと極まりないのだが、繰り返し食い入るように見ざるをえない。ここの演技には、演技を超えたリアリティを感じる。もちろん演技なのだが。 このたかだが3分くらいの場面のためだけでも、僕にとってこの映画の存在価値はある。

是枝裕和監督は、今年の夏、夏川さんと阿部寛を夫婦役にして、映画を撮った。 どんなものができるのか、今から楽しみだ。