INSTANT KARMA

We All Shine On

あなたを一ケース

気まぐれに自分の好きな曲やなんかについてタラタラ書いていくというコーナーを新たに設けます。

今日は、カナダのシンガーソングライター、ジョニ・ミッチェル Joni Mitchell『ブルー Blue』というアルバムから、 A Case of Youという曲の訳詞(拙訳)を載せます。

ジョニ・ミッチェルは洋楽好きにとって重要人物のひとりですし、実際素晴らしいアーティストですが、僕が心から好きと思える作品は、アルバムとしてはこの『ブルー』です。

このアルバムは、純度一〇〇%で心身に染み渡ります。特に超名曲A Case of Youは堪りません。七〇年代フォークにはいい歌手やいいアルバムがたくさんありますが、ひとつ次元が違う感じです。

タイトルは、てっきり「あなたの場合」てな意味かと思っていたら、「あなた」を酒に見立てて、一ケース分ていう意味だとわかったときにはちょっと驚きました。「あなたを一ケースのんだって私は立っていられるわよ」だなんて。なんという女性でしょうか。こんな女性に惚れられるとはなんという男性でしょうか。深い含蓄のある歌詞と独特のメロディーと歌い回しが相まって、いつまででも味わい足りない曲です。

A case of you/ Joni Mitchell

 

わたしたちの愛が終わる前あなたはこう言った

「僕の心は北極星のようにいつも同じところにある」

だからわたしは言ったの

「いつも暗闇の中にいるってこと? 

あなたが私を欲しいなら私はバーにいるわよ」

 

テレビのスクリーンの青い光のなかで

マンガのコースターの裏にカナダの地図を書いた

そう、カナダの地図

その上にあなたの顔を二度重ねて描いたの

 

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン

とても苦くて、とても甘い

あなたなら、ひとケースだって飲める

それでも私はちゃんと立っていられるわ

きっとこの足で立っていられる

 

私はひとりぼっちの絵描き

絵の具箱の中で暮らしている

私はとても怖がりだから

恐れを知らない人に惹かれてしまう

あなたがこう言った時のこと、よく思い出すの

「愛とは魂にふれること」

そう、あなたはたしかに私の魂にふれた

だからあなたの一部がときどき歌になって

私の中からあふれ出す

 

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン

とても苦くて、とても甘い

あなたなら、ひとケースだって飲める

それでも私はちゃんと立っていられるわ

きっとこの足で立っていられる

 

女のひとに会った

あなたによく似た口元をしていた

彼女はあなたの人生を知っていた

あなたの内側にいる悪魔も、あなたの行いも知っていた

そして言ったの

「彼のところに行けばいい

できるものなら、一緒にいればいいわ

でも血を流すことは覚悟しておいてね」

 

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン

とても苦くて、とても甘い

あなたなら、ひとケースだって飲める

それでも私はちゃんと立っていられるわ

きっとこの足で立っていられる