INSTANT KARMA

We All Shine On

こっくりさん

ネット動画で念願の「こっくりさん」が見れた。 最高。 暗い部屋で一人嫌なことを思い出しながらネタを考えている鳥居みゆきの姿が目に浮かぶようだ。 このライブと同時期に収録した「おかゆちゃん」と同じテンションなんだが、個人的にはこのキャラ一番好き。でもこれだけだとさすがに引くだろうな。 鳥居みゆきは、ネタ毎に変幻自在に人格を使い分ける。 「米屋さん」と「妄想結婚式」と「妄想葬儀」と「こっくりさん」は、いずれも「狂気」という部分では共通しているが、みな個性的できっちりと違う人格になっている。 「マサコのショートコント」では、さまざまな人格が矢継ぎ早に入れ替わって、ひとりパラレルワールドを展開しているが、狂気の中にも一貫性がある。それは単なる演技の域を超えていて、‘憑依系’とはまさに言い得て妙だ。 鳥居みゆきを見ていると、この人は決して「笑いのための笑い」をやっているんじゃない、と感じる。 よく、「モーツアルトは音楽のために音楽を作り、ベートーベンは人間のために音楽を作った」と言われるが、それになぞらえて言えば、鳥居みゆきは「人間のために」笑いをやっているのだと思う。 彼女が自己表現したいと思った時にそこにあったのが「お笑い」だったからお笑い芸人になったのであって、違う時代に生まれていたら、フォーク歌手になったかもしれないし、アングラ劇団に入っていたかもしれない。 演劇系という括りでは、イッセー尾形劇団ひとりといったところがすぐに思い浮かぶが、彼らは敢えて「マサコ」のような危険な賭けには出ないだろう。 鳥居みゆきをして「ポップになろう」と思わしめたものは一体何なのか。そのうちその辺についてじっくり語ったインタビューなりエッセイなりが読みたいと思う今日このごろ。