INSTANT KARMA

We All Shine On

HIStory

1枚がベスト盤,もう1枚がオリジナルアルバムという形で発売された2枚組『ヒストリー』は,今から考えると,過小評価されている作品だという気がする。

ジャネットとの共作『スクリーム』に始まる2枚目は,マイケルの個人的な怒りを叩きつけるような内容の曲が多く,純粋なオリジナルとして発売するとアーティスト・イメージにダメージが大きいという配慮が働いたのだろう。

当時のアルバム・レビューは「被害妄想の塊で聞くに堪えない」といった論調が大勢を占め,今発売中のニューズウィーク追悼号にすら,そんな記事が掲載されている。 しかし93年の幼児虐待疑惑の際に彼が捜査当局から受けた滅茶苦茶な仕打ち並びにマスコミの怒涛のバッシングを公正な観点から眺めれば,マイケルの怒りは人間としてきわめて真っ当なものというほかない。

音楽的には,必ずしも時流に乗ったビートではなかったかもしれないが,独特の「マイケル・グルーヴ」とでも呼ぶべきものが至る所に暴発している。

もちろんメロウなこの世離れしたバラードも健在で,『ユーアーノットアローン(君は独りぢゃない)』は,90年代で最高のヒーリング楽曲ではないだろうか。

『2BAD』は,いまいち腰が座っていなかった『BAD』での自分に喝を入れるかのような畳み掛けるマイケルファンク。「ゴースト」の中での,この曲のダンスは,まさにすさまじいとしか言いようがない。

結論。『ヒストリー』ディスク2は,あらゆる面において,強烈なマイケルというものが堪能できる傑作だ。