INSTANT KARMA

We All Shine On

27時間テレビ

週末はなんとはなしにフジテレビの27時間テレビをだらだら見てしまった。 せっかくなので雑感をメモしておく。

今年は「笑っていいとも」30周年を記念してタモリが総合司会だったが、昭和20年生まれでもう62歳になる彼の体力が持つのか、途中で倒れたりしないか、というのが僕にとって最大の関心事であった。

そこはさすがプロ、全く食事を取らず、手を抜くところは徹底して抜くというペース配分で27時間を無事乗り切って見せた。

しかしそのようなスタイルが災いしてというべきか、「ご本尊」であるタモリを周囲のタレントや芸人たちが盛り立て、タモリのために「団結」するという展開に終始し、結果的に視聴者ではなくタモリのための番組になってしまっていた。

本人も番組の最後に「(フジテレビとして)団結したのはいいが、かえってそのために国民からは離れてしまったのではないか」と自責の念を込めてコメントしていたのが印象深かった。

タモリと様々な大物お笑い芸人が絡むというのが今回の目玉だったわけだが、期待にたがわず、ビートたけし明石家さんまとんねるずダウンタウン、99といった豪華メンバーが出演し、それぞれにタモリとのトークを繰り広げた。

最初にざっくりと印象を言えば、「みんな年取ったなあ」ということに尽きる。

80年代や90年代の全盛期を知っている目から見ると、タモリをはじめ、どの芸人も衰えが著しいというほかなく、まさに一時代の終焉を見ている気分だった。

なんといっても、テレビに映る大御所芸人たちが完全に<老人>の容貌であることがデジタル画面を通して無慈悲に伝わってきて、思わず目をそむけたくなる場面も多かった。

そんな中でも、ビートたけしが完全にリタイア状態で、とんねるずでさえもう現役感を失いつつある中で、全盛期にほぼ引けを取らないパフォーマンスを見せていた明石家さんまはさすがというほかない。

僕は、すべてを自分の笑いのセオリーに結びつけ、何が何でも強引に笑いを取りに行く彼の独善的なスタイルには以前から批判的だが(夜中のBIG3でのトークでもタモリがその点を指摘していた)、それでも時代の流れに決して遅れまいとする彼の並々ならぬ才能と努力には脱帽する。僕は普段彼の番組はまったく見ないが、こういうところで実力を見せつけられるのはなかなか気分がよい。

ダウンタウンは、日曜の昼間に若手の芸人たちを引っ張りながら一つの番組コーナー(アカン警察)を見事にやり切っていた。これを見ると、ダウンタウンと彼ら以後の若手芸人たちとの実力差に唖然とさせられる。

最も象徴的だったのが、最後に若手芸人の一人(ピースの綾部)が浜田の頭をどつくというパフォーマンスを行い、即座に怒り狂った浜田に反撃されるという場面だった。台本があったのかどうか知らないが、ダウンタウンはたぶん台本なしでも一連の流れを、当意即妙なアドリブを混ぜつつ完璧にやり切って見せるだろう。一方で若手芸人たちはたぶん台本がないと何もできないんだろうという気がした。(途中、バナナマンの日村が、綾部に「タモリダウンタウンのどちらを選ぶのか」と無茶ぶりされ、言葉に詰まった揚句、ちゃんとオチをつけられなかった場面があったが、これも象徴的だ。)

もっとも、そんなダウンタウン(特に松本)の笑いも既にはっきりと衰えているという事実は過去にこのブログで何度も言及してきたとおり。 その他の芸人の中で唯一ダウンタウンと勝負できる実力があるのは爆笑問題だと思うが、大人の事情で今回も共演は実現しなかった。今回の27時間テレビで一番期待していたのがここだったので、個人的には残念だった。

もうそろそろ両者とも現役感をもってガチの勝負ができる時期を過ぎようとしていて、おそらく今年あたりがラストチャンスだったのではないか。 99については、「台本ありきの若手芸人たち」の中では最上のスキルを持っているとしか言いようがない。それにしても(久しぶりに見た)岡村でさえ年を取ったと感じてしまったのが驚きだった。

このように、ところどころで注目すべき部分はあったものの、先述したように全体としては「神々の黄昏」という印象を受けたと言わざるを得ない。日本のお笑い芸能史は80年代から90年代のテレビ文化爛熟期をもってひとつのピークを迎え、2000年代以降は着実に凋落の一途を辿っているということを再確認したのが今年の27時間テレビの収穫(?)といえるかもしれない。

最後に、ほぼ27時間出ずっぱりだったHKT48(元AKB48)の指原りのについて。お笑い芸人の真似事を避け、あくまでも(ややバラドル寄りの)アイドルとして振る舞っていたのは賢明だったと思う。ただ正直言えばもう少し喋らせてあげたい気もした。太田光がところどころで指原に言及していたのが嬉しかった。

番組の最後に、いいともメンバーの一人ひとりに大切な人からのビデオレターが流される場面で、秋元康からビデオレターが届くのかと期待したが、それはなかったようだ。

今回の番組を見る限り、指原は今後も以前と変わりなく在京キー局の番組に出続けるような気がするが、AKB全体にとってそれがいいことなのかどうかはよく分からない。今のところ指原に変わるポジションのメンバー(お笑いセンスの持ち主)がいないので仕方ないのかもしれない。個人的には博多での活動に専念して地方からの逆襲を遂げるのが一番かっこいいと思っている。