もう何年も前、エレファントカシマシの宮本浩次が泉谷しげるの番組に出て、「春夏秋冬」を一緒にやったことがある。
毒舌家の泉谷にしては珍しく、宮本のことはベタ褒めで、特に宮本の声が羨ましいと言っていた。
「羨ましくて腹が立つからエレカシのレコードは余り聞かない」と言っていた。
ミヤジは恐縮しながらも、「春夏秋冬」をきっちりと歌っていた。なかなか感動的であった。たしか「桜の花舞いあがる道」も一緒にやっていたと思う。これもレコードより素晴らしい歌だった。
僕の知る限り、宮本と忌野清志郎が共演したことはなかったように思う。
エレカシのデビュー直後、エレカシとストリート・スライダーズとRCサクセションがこの順番でライブイベントをやったことがある。
ミヤジは不機嫌そうに「デーデ」や「ファイティングマン」を喚き散らし、最後は「やさしさ」で締めた。
スライダーズはアコースティックで「エンジェル・ダスター」を演った。
最後に出てきたRCは、「いいことばかりはありゃしない」のブルース・セッションから始めて、途中でキヨシローが「エレファントカシマシ カッコよかったぜベイベー」と言ったのが印象に残った。
たしかに、あの時のエレカシはカッコよかった。全身全霊で苛立っていた。
「ココロに花を」以降のエレカシには、ああいうカッコよさは感じなかったが、いちどだけ度肝を抜かれたのが、フジテレビの「ヘイヘイヘイ」で「ガストロンジャー」を披露したときだ。あれには大笑いした。
エレカシの歌詞に好きなのが多いが、「涙」なんてのもいい。
悲しいときには涙なんかこぼれない
うれしいときには肩怒らせ世を笑うさ
それでいい時間が止まらないで過ぎるだけで
それでいい時間が止まらないで過ぎるだけで
遠くなって近づいて遠くなって過ぎるのさ
悲しいときには涙なんかこぼれない
うれしいときには肩怒らせ世を笑うさ
この世の理不尽と不正義にわなわなと打ち震えながらも、森鴎外や永井荷風を愛読し、火鉢や中国製の急須に凝り、江戸の古地図を片手に都内を散歩するという変わった趣味の持ち主である宮本浩次という青年は、ある日、ヒット曲で稼いだ全財産を仕事上のパートナーに持ち逃げされ、愛車のポルシェを売り払い、安い部屋に引越しせざるをえなくなったが、持ち逃げした人物を訴えることもなく、後に渋谷の路上を散歩中に財産を持ち逃げした人間に出くわしたとき、「元気そうで何よりだった」と語っている。
嗚呼、繊細で愛すべき万年純情青年の宮本浩次くん。
わたしはあなたをいつまでも待ち続けよう。
どんな形でもいいから、いつか戻ってきてほしい
急がなくていいから 焦らなくていいから
※10月10日に、宮本が14日の日比谷野音のステージに登場することを発表した。
見に行こうかな