椎名林檎のデビューは衝撃的だった。 美形で、パンクで、声が魅力的で、巻き舌がカッコよくて、バンドの中でギターを持つ姿がサマになっていて、いい曲が書けて、言葉遣いにセンスがあって・・・ こんな日本人の女性ロッカーがいたらいいな、という理想像をすべて体現した存在が現れたと思った。
デビュー曲の『幸福論』とデビューアルバムの『無罪モラトリアム』を聞いたとき、これでもう大丈夫だ(何が大丈夫なのかよく分からないが)、と思った。
以来、椎名林檎は僕の中で「活動してくれているだけで有難いミュージシャン(何が有難いのかよく分からないが)」という存在になっている。
そんな椎名林檎が、いつの間にかデビュー15周年を迎えたという。 最近の彼女の曲はそんなに熱心に聞いていないが、やはりデビューアルバムが一番好きだ。 歌詞が本当にいい。
1曲目「正しい街」がいきなり泣ける。
18歳の時に制作された曲。デビュー直前、福岡で交際していた当時の恋人に、デビューするため上京することとなり、別れを告げた時のやりとりと心情を綴った曲。歌詞にも福岡にある「百道浜」「室見川」が登場する。椎名はこの曲を必ずアルバムの1曲目に収録すると決めていた。(Wikipediaより)
あの日飛び出した此の街と君が正しかったのにね
都会では冬の匂いも正しくない
百道浜も君も宝見川も無い
もう我が侭など言えないことは分かっているから
明日の空港に最後でも来てなんてとてもいえない
忠告は全てをいま罰として現実になった
あの日飛び出した此の街と君が正しかったのにね
2曲目「歌舞伎町の女王」。
18歳の時に制作された曲。この曲は上京した時渋谷周辺を歩いていた際に、SMクラブのスカウトマンにスカウトされたときに思いついた曲。(同上)
蝉の声を聞く度に 目に浮かぶ九十九里浜
皺皺の祖母の手を離れ 独りで訪れた歓楽街
という出だしのフレーズが天才的だと思う。
3曲目「丸ノ内サディスティック」。
デビュー前、イギリスに留学していた際にミュージックシーケンサーの打ち込みで作られ、歌詞は全て英語であったが、発表するにあたって語感の良い日本語に変えている。タイトルの「丸の内」とは、当時の営団地下鉄(現在の東京メトロ)丸ノ内線のことであり、主要駅が歌詞に登場する。(同上)
歌詞よりも曲ありきのノリのいいナンバーで、言葉遊びの才能が存分に発揮されている。こんな素敵な歌詞を書けるロックンローラーはこれまでいなかった。
4曲目「幸福論」。
椎名林檎の歌詞の中で一番好き。涙が出るほどいい。アルバムやライブではわざと声を聞き取りにくくして謳っているが、直球ストレートな歌詞なので照れくさいのだろうか。 好きな歌詞を2つ挙げろと言われたら、自分はマーヴィン・ゲイのWhat's Going Onと、この曲を挙げる。
これらのアルバム収録曲に加えて、シングル『幸福論』とカップリングされていた『すべりだい』という曲が大好きだった。 『無罪モラトリアム』と、シングル『本能』を聞いたとき、こんな作品が出せるミュージシャンが、これから何をやっても、どんな人生を送ったとしても、素晴らしくない筈がないと思った。
そんな椎名林檎が、デビュー15周年を迎えたという。 おめでとうございますというより、ありがとうございます、と言った方がしっくりくる。 完全に崇拝者だね。