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独身貴族!

昨夜放映された『独身貴族』第10話を見て、このドラマは北川景子という女優をどれだけ美しく撮ることができるかに挑戦しているのだなと感じた。

それはそれでいい。

北川景子の表情はとても魅力的に映っている。

ファンとしては嬉しいし満足だ。

しかし1本のドラマとして、これが彼女の代表作になりうるかと考えると、ちょっと寂しい出来のような気がする。

ストーリーの大筋はよいのだが、登場人物の台詞や展開に唐突で不自然な所が多い。

たくさんありすぎるので一例だけ挙げるに留めるが、第9話の終わりに、ゆきが自分の気持ちに気付いて号泣する場面がある。そこに至る過程が大切なのだが、見せ方が粗い。特に、直前の事故のくだりは完全に不要。守が立ち去って行く姿をゆきが見かけるだけで十分だった。

ゆきと同居している親友も、ゆきのあのような心の叫び(本当は守が好き)を聞かされながら、その後の態度があっさりしすぎている。守の花嫁が逃げたと聞いて、もっと気を揉んでもいい。そもそも花嫁が結婚式の当日に逃げ出すという脚本自体があまりにご都合主義すぎて笑う気も起きない。

第10話でいえば、翌日の朝イチが締切のデッドラインであるにもかかわらず、ゆきは進と一緒に東京タワーに上り、その後に映画まで見る。このあたりの呑気さは、伊藤英明主演の映画『海猿』で、緊急事態が迫る中でヒーローとヒロインが悠然と愛を語り合っている不自然さに通じるものがある。

たぶん主演が草なぎ剛北川景子でなかったら、とても見れたものではなかったろう。逆に言えば、二人のファン以外の人が見たら、ちょっと耐えられない出来なんじゃないかという気がする。

ただし第8話はよかった(それでも注文をつけたい部分はあるが)。

いつも思うのだが、日本では(日本に限ったことかどうかは知らないが)、いい役者はいても作品に恵まれないというパターンが多い。原節子だって今の時代に生まれていたら凡庸な女優で終わってしまったかもしれない。

繰り返すが、このドラマの北川景子の演技はとてもいいと思う。草なぎ剛も好演している。基本的に僕の見る草なぎ剛はどんな作品でもなかなかの演技をしている。この人のいいのは、声がよくて台詞が聞き取り易いところだ。佇まいもわりと様になっている。

僕は北川景子の映画は観に行ったことがないし、写真集もDVDも買わないライトなファン(そして若干面倒臭いファン)にすぎないが、彼女にはこれから本当にいい作品にめぐりあってほしいと思う。