INSTANT KARMA

We All Shine On

27時間テレビ

例によってフジテレビが毎年恒例の「27時間テレビ」なるものを行った。

今回はほとんど見ていないので何の感想もない。

フジテレビというのは公共の電波を無駄遣いさせたら右に出るものがいない。

巧妙な政治的プロパガンダを放送されるよりはまだマシだが、メディアがもてあましている巨大な真空を、スマップのような若者たち(もう若くもないか)が必死に身体を張って埋め合わせをやらされているのを、大変だなあと思いながら横目で見た。

日曜日の夕方の時間に、スマップの5人が何もないスタジオの会議テーブルの前に座らされて、1時間くらいスタッフも何もせず投げっぱなしという場面があった。

これはある意味で現代社会の空虚さを象徴するような時間帯だった。この国の1億人が共有しようとすればできる悪夢のような虚無に満ちた時間と空間。

こうしている間にもイスラエル軍パレスチナの若者たちを砲撃し、テロリストは無辜の市民を殺害し、貧困にあえぐ家庭で弱い子供たちが虐待に遭い、日本向けの外国の食品工場では腐敗した食肉が加工され、ある人々はFXに熱狂して一瞬で巨額の財を手にし、ある人々は借金に追い立てられ一家離散し、国家の役人たちは国民から一滴でも多くの金を搾り取るためにあらゆる法律の解釈テクニックを駆使し、何十万の人たちがスマホの画面を一日中にらめっこしながらスケープゴートを捜している。竜巻や狂ったような雷や滝のような豪雨が都市や田舎を襲う。

今まではテレビを見ながらおとなしく笑っていた中流階級の皆さんも、ハードな日常生活の中で近頃ではすっかり冷めてしまってお笑いにうつつを抜かすこともできない。

日曜の昼下がりにテレビをつけると国民的アイドルと呼ばれる中年男たちが、黒くてだだっ広いスタジオの中で、折り畳み式の会議テーブルを囲んでパイプ椅子に座って、憔悴して疲れ切った顔をしながら、気の進まない雑談に興じている。

するといきなり、天井から無数のピンポン玉が彼らの上に降り注いだ。

別室で実況しているアナウンサーによれば、これが「国民の総意」だという。

デジタルデータ通信を通して、「今起こったら楽しいこと」をアンケート調査して、4つの選択肢の中からこれが選ばれたのだという。

これが国民の税金を大量に投入してアナログ放送からデジタル放送に移行することによって得られた偉大なる成果だ。

NHKは5年以内にスマホやパソコンでインターネットを閲覧するすべての人から受信料を徴収するためのシステムを開発中だという。

スマップのリーダーの中居正広が、天井から無数のピンポン玉が降ってくるというハプニングに遭遇した後、ああびっくりしたと言いながら笑わない目で笑った。