BSで、満島ひかりが蜷川幸雄演出の『ハムレット』に挑戦するというドキュメンタリーを放送していたのを見た。
その中で、ひかりは「私なら、『生きるべきか、死ぬべきか』とは訳さない」と言っていた。
なぜなら、ハムレットが悩んでいるのは、肉体的な意味での生死ではなく、精神的な意味のそれだからだ。
自分の真実の思いを貫いてここに在り続けるのか、周囲の大人の事情に配慮して自分の心をごまかして生き延びるか、そういう問題でハムレットは悩んでいたのだと思う、と。
そうそう、まさに『ハムレット』はそういう話なのだ。
昔の外国の王子の高貴な苦悩ではなくて、現代の自分たちのリアルな苦悩に引き付けて考えるのでなければ、シェイクスピアをやる意味がないだろう、と。
ひかりのこの言葉を聞いただけで、あのドキュメンタリーを見た価値があった。