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東京百景

小説『火花』が芥川賞の候補作品になって話題のピース又吉

移動時間の暇つぶしのつもりで買った『東京百景』というエッセイ集を読んでとても面白かった。

『火花』の方は、文芸誌に掲載された頃に一読したときにはそんなに感銘は受けなかった。

この人は短い作品、それもショートショート的なものの方が向いているのかもしれない。

鳥居みゆきの小説を読んだときにも感じたのだが、お笑いの人が小説を書くと、文体にネタ帳みたいな感覚が紛れ込んできて、集中力を削がれる時がある。又吉の作品にもそういう部分を感じなくもないが、これはこういう新しい世代の文体なのだと思うとそれはそれで新鮮味がある。

とにかく、ページごとに吹き出してしまうユーモラスな表現が散りばめられていて、なおかつ太宰的な自意識過剰性とシニカルなペーソスを含んだ表現力には才能を感じる。

『火花』はやや文学調を意識し過ぎみたいなところがあるので、もっとシンプルに書けば相当面白いものが書けるのではないかと思った。