INSTANT KARMA

We All Shine On

マイルス&プリンス

晩年のマイルス・デイビスがプリンスを高く評価していたことは有名だが、実際に共演したこともあった。

プリンスの居所でもあるペイズリー・パークの1987〜1988の年越しステージにマイルスが飛び入りしたビデオが残っている。

当時は『サイン・オブ・ザ・タイムス』を出すなど、プリンスがそのキャリアの中でもピークにあったと言える時期であり、非常に貴重な記録である。

「It's Gonna Be A Beautiful Night」の最中に紫のスーツを着て颯爽とステージ中央に現れたマイルスは巧妙なソロを吹き始め、プリンスとCATはマイルスに敬意を払うかのように大人しく振付をつけている。プリンスの父親はジャズ・ピアニストだったから、マイルスはプリンスにとってまさに殿上人だったろう。

マイルスのソロは今一つ鋭さと烈しさがなく、観客の反応も微妙だ。プリンスが盛り上げるためにスキャット・ヴォイスでトランペットに絡む。両者のファンである目から見ると、この場面はまさに感無量だ。

最後に「ミスター・マイルス・デイヴィス!」とプリンスが叫んだ時に、ほとんど観客の反応がなかったのは少し寂しかった。

マイルスがロックファンに真っ向からケンカを売ったのは70年代初頭であり、この頃のステージは鬼気迫る迫力がある。この時期にジミヘンとの共演が実現しなかったのは残念である。

でも本当に一番好きなのは、アコースティック・ジャズ時代だったりする。

その辺についてはまた改めて。