INSTANT KARMA

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世紀の光

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督のタイ映画『世紀の光』(Syndromes And A Century)という作品を見た。

プンミおじさんの森 という作品で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)を受賞している。

ほとんどまったく予備知識なしに、渋谷に行ったついでに飛び込んで見たのだが、自分がこれまでに見たどんな映画とも異質なものを感じた。

バッドトリップというか、サイコホラーというか、日本で言うと伊丹十三の初期作品とか、ジャンルは違うがつげ義春の漫画や中原昌也の小説のような感じ。

ストーリーはあるようでなく、断片的物語が独特のリズムで語られていく。

前半の緑豊かな田舎の病院の光景と後半の都会的で無機質な病院の描写の対比に始まって、明るさと暗さ、科学と神秘、聖と俗、、、あらゆる二元性が、不思議な不気味さを奥底に秘めながら交錯していく。

最初のカット(ただ揺れる木の枝を撮っているだけのありふれた映像)を見ただけで何かただならぬものは感じたので、パンフレットに書いてあった“世界映画の21世紀最大の才能”というのはそういうことなのだろうかと思った(パンフレットをあらかじめ見たからそう思っただけなのか、自分の感覚に今ひとつ自信が持てないのだが)。

映像のセンスと間の取り方が、映画でしか表現できないものを伝えている。 他の作品も見てみたくなった。タイ映画おそるべし、というのが現時点の印象。