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書きたいこと

書きたいことが無くても、悪ふざけでも何でもいいから、とにかく毎日ブログを更新することを自分自身に義務付けて、1週間経過。

とうとう「書きたいこと」ではなく書くことがなくなった。

そういえば、トーマス・ベルンハルトという作家の「私のもらった文学賞」という本(みすず書房)を図書館で借りた。

まだ読んでいないが、せっかく権威ある文学賞を受賞したのに、受賞スピーチでさんざんに関係者をこき下ろす身も蓋もない中身だと聞いている。

わが国でもつい最近、似たような出来事があった。

東京大学総長で著名な評論家でもある蓮實重彦が、「伯爵夫人」という小説を発表し、三島由紀夫賞を受賞したのだが、その受賞記者会見が凄かったらしい。

この記事の最後に全文を貼り付けておく。

で、面白いのは、東浩紀がこの記者会見を「茶番」とツイート。

こういう「芸風」、かっこ悪いからやめればいいのに。というか、まわりもそろそろ喜んであげるのやめればいいのに・・

だいたい、今回のコメントで騒いだでいる人のほとんどは、蓮実重彦の文章なんてまったく読んでないわけでしょう。だから彼のあの発言が、何十年も繰り返されてきた「芸風」であることも知らないわけで、すべてが茶番。そしてむろん主催者はそんな茶番でももういいやと思っているわけで、それも茶番。

そして芥川賞作家辻仁成氏もこの会見を批判。

辻仁成 @TsujiHitonari 2016-05-17 09:14:37

三島賞を受賞した元東大総長の蓮見重彦氏、「全く喜んでない。はた迷惑、蓮見を選ぶ暴挙」と発言。しかし候補になると必ず出版社は通達する。その段階で断らなかったのに受賞後にはた迷惑とは? ならば候補の段階で辞退するべきでは?受賞を受けてのこの発言こそ暴挙じゃないか? 若手に失礼です。

一方では脳科学茂木健一郎氏のコメント。

茂木健一郎 @kenichiromogi 2016-05-17 06:59:27

「はた迷惑」という言葉には、簡単には同意、調和しない、という不屈さが表れていて、それは、知性の一つの印だと思う。蓮實重彦さんのような頑固さが、メディアで見られなくなって久しいからこそ、新鮮で痛快だった。

そういえば昨日のNHKラジオ「すっぴん!」では、中原昌也も「蓮見センセー、サイコー!」みたいなことを絶叫していたような気がする。

その一方で、われらが田中ヤスヲちゃん(通称ヤッシー;元長野県知事)はニコニコ生放送「あとは自分で考えなさい!」でこの話題について取り上げ、「だったら最初から断れよ。こんなオッサンが東大の総長っていうんだからこの国もダメだね」みたいなことを言っていた気がする。

まあどうでもいいや。どっちに転んだってどうだっていいんだ、こんなことは。

もっと重要なことは世の中にはたくさんあるんだから。今月の家賃をどうやって払うかとか。

それにしても「伯爵夫人」って?

「武蔵野夫人」は菊地寛、「ボバリー夫人」はフローベール、「チャタレイ夫人」といえば最高裁の有名な「わいせつ三要件」

1 徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、

2 且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、

3 善良な性的道義観念に反するもの

お蝶夫人」は「エースをねらえ」で、作者が新興宗教の教祖で、「美徳のよろめき」が例の三島由紀夫で、ブラバツキー夫人は神智学協会の創始者、と・・・

それはそうと、木下古栗が「文藝」最新号に、「『グローバライズ』刊行記念 [創作論] 表現と書く技法」という文章を寄せていて、興味深かった。

どんな頭してんだろう、と思ってたら意外に真面目に考えて書いてるんだなあということが分かった気になった。

ネット社会の中で万人が「表現者」となり、「語り」が氾濫する「ブログ的」な文章が支配的な世界において、小説の存在意義とは何なのか。そんな問題意識に真摯に取り組んでいる様子が伝わってくる。

でも何が言いたいのかは結局はよく分からない。そんなところも含めてフルクリ的だ。

我々は宇宙人だ。地球人も宇宙人とするならである。バラク・オバマは一見ワイルドなことに将来的な火星への有人飛行をぶち上げたが、それは不都合な真実から目をそらさせるためでしかなく、我々は火星などに行く必要はない。そんなものはこの閉塞し切った環境にまだ外部があるかのような夢想を抱かせようとする他愛のないまやかしである。(中略)もはや選択肢は一つしかない。すなわち、見る影もなくワイルドさを減退させながら締まりなく死に絶えつつあるこの文明、その衰弱を出し抜いて、我々はこの星に移住するのだ。地球の作法など知ったことかとばかりの野蛮さを内に秘めて、ある種の不穏さを唯一の武器として。

そして制圧する。

そのためにはまず挨拶である。というのも我々はSF映画にあるようなUFOからビームが飛び交うような侵略戦争を行うわけではない。むしろ狡猾に隠密に、諜報部員のごとく各々自身に潜入して、うわべは全くこの星の作法に従うふりをしながら、ひそかにそこにずれをもたらし、気づかぬうちに変質の種を忍び込ませ、気づいた時にはすべてが手遅れであるような生起がそこら中で勃発しているべきだなのだから。従ってなすべきことは以下のようになる。服を着ていても服に対しては裸であるという認識によってそれを剥きだしの裸と同等とする自己欺瞞ではなく、服を着ていようがいまいが単に裸であることによって裸という表象を脱ぎ捨てること。不断の生きる裸の振る舞いによって「裸である/ない」という峻別を突っ切り葬り去ること。声高にお喋りにかまけるのでも喋り疲れた後のもったいぶった沈黙でありもしない何かを暗示しようとするのでもなく、今にも襲い掛からんばかりの血に飢えた野獣のごとき低い唸りを腹の底から漏らし続けること。危険かつリラックスした雰囲気を纏うべく常に最大限緩めたベルトに手をかけておくこと。風呂では体を洗いすぎず野生のフェロモンを発し続けること。そうしながらも礼儀正しく毅然とした態度で過ごすこと。その上で、にこやかな「こんにちは」という平常のあいさつの陰にもっととんでもない「こんにちは」の爆弾が潜んでいることを、間近に正対した際の死角、とりわけ下半身の瀬戸際外交的な不自然な腰の蠢きのうちに絶えず孕ませ続けることである。

その先のヴィジョンは既にある。

(木下古栗「いい女VS.いい女」より引用おわり)

(以下記録用に貼り付け)

司会者 三島賞を受賞された蓮實重彦さんです。最初にうかがいますが、凡庸な質問で恐縮ですが、三島賞を受賞された知らせを受けてのご心境をうかがわせていただければと思います。

蓮實重彦氏(以下、蓮實) 「ご心境」という言葉は私のなかには存在しておりません。ですから、お答えしません。

司会者 ありがとうございます。質疑に移らせていただきます。誰かございますでしょうか、ウカイさんどうぞ。

記者1 読売新聞のウカイといいます。どうもおめでとうございました。本日、蓮實さんはどちらでお待ちになっていて、連絡を受けた時にはどのような感想をお持ちになりましたでしょうか?

蓮實 それも個人的なことなので、申し上げません。

記者1 わかりました。それと、今回、三島賞の候補に蓮實さんがなられた時に、当然のことながら事務局のほうから「候補になっていただけますか?」という連絡がいって、やっぱり了解されたと思うんですが。

自分の意見言う前に、お答えしていいのかわからないんですけど、正直、蓮實さんが新鋭の、新人の前途を開く賞の候補になることにずいぶんビックリした思いがありましたので。

もしかしたら、もし候補になるとしても、蓮實さんはお断りになるのではないかなとも思っていただけに、お受けになったことにたいへん驚いたんですが。蓮實さんとしてはどのような思いで、今回候補になるということを決められたのか、おうかがいできればと思いますが。

蓮實 はい、それもお答えいたしません。

記者1 わかりました。じゃあ、もう1つ、別の質問に変えさせていただきます。今回、選考会の選考委員を代表して、町田康さんが出てきました。それで、さまざまな議論があったけれども、これまで退廃的な世界も描かれてきた蓮實さんではありますが、今回の作品は言葉で織り上げる世界がとても充実していて、小説としてのできは群を抜くという、そのような……。

蓮實 質問ならば簡単におっしゃってください。

記者1 はい。わかりました。という評価がありましたが、そういう評価に対しての思いというのはなにかありますか?

蓮實 ありません。

記者1 わかりました。

司会者 ほかにございますでしょうか? 

蓮實 ないことを期待します。

司会者 どうぞ。

記者2 共同通信のモリハラと申します。こういう場ですと、受賞が決まった方に「おめでとうございます」という言葉を投げかけてから質問するのが通例なんですが、ちょっとためらってしまうというか、先生は受賞について喜んでいらっしゃるんでしょうか?

蓮實 あの、まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております。80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております。

もっともっと若い方が、私は順当であればいしいしんじさんがお取りになるべきだと思っておりましたが。今回の作品が必ずしもそれにふさわしいものではないということで、選考委員の方がいわば「蓮實を選ぶ」という暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは非常に迷惑な話だと思っております。

記者2 今、日本の文化の状況にとってはよろしくない。つまり、ほかの若い作家の方が選ばれるのでなく、ご自身の作品が選ばれるということは。文化の状況とおっしゃいますか、もう少し今の文学の状況に照らして、なにか先生の目からご覧になって、物足りなさを感じるようなことがあるんでしょうか? 今回、ご自身が作品を発表なさる背景にあるいはそういうお考えがあったり。

蓮實 いや、それはありません。

司会者 どうぞ、ウカイさん。

記者1 もっと若い方がお取りになるべきだということがありましたけれども。ついこのあいだ、蓮見さん、早稲田文学新人賞で黒田夏子さんを選ばれて、それで彼女は芥川賞を取られました。

必ずしも「80歳の……」ということが理由なのか、それともまた別の理由があるのか、黒田さんも70代の後半ぐらいになっていたと記憶しておりますが、暴挙と言われる理由についてもう少し具体的におうかがいできればと思います。

蓮實 黒田さんは若い方ですので一切問題ないと思います。若々しい方ですし、文学としても若々しいものであったと。したがって、若者的な若々しさとは違うなにかがあったので、私は選ばせていただきました。

記者1 しかし、今回の作品はいわゆる舞台が、戦争の始まる直前とはいえ、若い男の子が主人公で、非常に映画が好きで。なにか蓮實さんの世界を読んでいると、それはもちろんおっしゃらないとは思うんですけれども、蓮實さんの若い青春期も思い起こさせるような……。

蓮實 いや、まったくそれはありません。

記者1 わかりました(笑)。いずれにしても……。

蓮實 馬鹿な質問はやめていただけますか。

記者1 わかりました。でも、少しだけ、記者会見ですので、おうかがいできればと思いますが。

黒田さんの世界は若々しさがあるということなんですが、ご自身の世界は、私はつまり若々しさを感じたということなんですが、そういうふうにはご自身では理解して書かれてはいなかったという?

蓮實 いや、黒田さんは、これは傑作であり、私の書いたものは到底傑作と言えるものではありません。あの程度のものなら、私のように散文のフィクションを研究してる者にとってはもういつでも書けるものであるわけですが。あの程度の作品というのは、すなわち相対的に優れたものでしかない、ということだと思っております。

小説は「向こうからやってきた」

司会者 どうぞ、タカダさん。

記者3 すいません。「相対的に優れたものでしかない」とご自身の目で見て、ご自身の作品を批評されるとそういうことになるかというふうに思って、さすがだなというか、驚いているところもあるんですが。

蓮實 あの、前……おっしゃることと質問とが噛み合ってないと思います。今おっしゃったことは必要ないことだと思います。

記者3 では、ちょっと、単刀直入にうかがいたんですが。今回の受賞作ですけれども、今回3作目ということになると思うんですが、小説。執筆しようと思われたきっかけ等あればおうかがいしたい……。

蓮實 まったくありません。向こうからやってきました。

記者3 依頼があったから書いたという?

蓮實 は?

記者3 依頼があったから書いたと?

蓮實 いえいえ。そうではありません。

記者3 小説が向こうからやってきた?

蓮實 そういうことです。

司会者 ほかにございますか? どうぞ、マツダさん。

記者4 すいません。逆にうかがいたいんですが、研究者の目で「相対的に優れたものでしかない」と思いながら、小説というのは、逆に、書いたりできるものなのでしょうか? やっぱりなにか情熱とかパッションみたいなものがないと書けないんじゃないかなと。

蓮實 いや、情熱やパッションはまったくありませんでした。もっぱら知的な操作によるものです。

記者4 もう1つ関連してうかがいたいんですが。そうすると、この小説を読んだ時に、例えば戦争に向かう今の時代の危うさとか、なにか「卑猥なイメージで現代を揺らせてみたい」とか、そんなことをつい思いたくなってしまったりもするんですが、そういう意図というのはあまりない感じなんですか?

蓮實 なんですか、最後の……。

記者4 卑猥なイメージで読者を揺すぶってみたいとか、そういったことをちょっと思ったりさせるような小説でもあるような気がするんですが、あまりそういう意図もないという感じなのでしょうか?

蓮實 申し訳ありません。おっしゃることの意図がわかりません。

今後の執筆予定はあるのか?

司会者 タカダさん、どうぞ。

記者5 「先ほど、小説が向こうからやってきた」ということをおっしゃっていました。「知的好奇心」ともおっしゃいました。『「ボヴァリー夫人」論』を書かれたことは大きかったんでしょうか?

蓮實 それは非常に大きいものであったことは確かです。『「ボヴァリー夫人」論』に費やした労力の100分の1もこの小説には費やしておりません。

記者5 それから先ほどお答えにならなかった質問をあらためておうかがいします。三島賞を与えたことが「暴挙である」とおっしゃったんですが。であるとすれば、候補になることをお断りになる方法もあったと思うんですけれども、それをされなかったのはなぜかということを……。

蓮實 なぜかについては一切お答えいたしません。

記者5 あ、えー……わかりました。

蓮實 あの、お答えする必要ないでしょう?

司会者 ほかにございますでしょうか? どうぞ。

記者6 NHKのカワイと申します。講評のなかで、すごく作品として1つの時代の完結した世界を描いているということを話していたんですが。なにかこの作品を現代のいま書く理由というものが蓮實さんのなかにあったんでしょうか?

蓮實 いや、まったくありません。あの、まったくありませんというのは、向こうからやってきたものを受け止めて、好きなように好きなことを書いたというだけなんです。で、それでいけませんか? なにをお聞きになりたかったんでしょうか?

司会者 ほかにございますか?

記者7 ちょうどいま80歳になられるということですが、これから今年の、例えば執筆予定とか、決まってるものがあれば、教えていただければと思うんですが。

蓮實 なにについてでしょう? 小説をまた書くかという?

記者7 そうですね。小説とか、あと研究・批評とか。

蓮實 小説を書くという予定はありません。あの、書いてしまうかもしれません。なにせ小説というのは向こうからやってくるものですから。あと『ジョン・フォード論』は完結しなければいけないと思っておりますが。

この作品についてどなたか聞いてくださる方はおられないんでしょうか?

司会者 どうぞ。

記者8 産経新聞のカワシマといいます。なにがやって来て、なにについて書かれたものであり、文学研究者としては、もし自分が第三者だとすると、どのように評価されますか?

蓮實 評価については先ほど申し上げたとおりです。相対的に優れたものであり、あんなものはいつでも書けるということです。それから、最初の質問はなんでしたっけ?

記者8 なにが来たんでしょうか? 向こうから来たものについて。

蓮實 向こうから来たものというのは、いくつかのきっかけがあったことはお話ししておいたほうがいいと思います。

現在93歳になられる、日本の優れたジャズ評論家がおられますけれども。その方が12月8日の夜、あるジャズのレコードを聞きまくったという話があるわけですね。で、「今晩だけはそのジャズのレコードを大きくかけるのはやめてくれ」と両親から言われたという話がありますが。

その話を読んだ時に、私はその方に対する大いな羨望を抱きまして。結局1941年12月8日の話を書きたいなとは思っていたんですが。それが『伯爵夫人』というかたちで私のもとに訪れたのかどうかは自分ながらはっきりいたしません。

記者8 それは「書きたいな」と思われたのはいつ頃でいらっしゃいますか?

蓮實 「書きたいな」とは一度も思っておりません。

記者8 ……わかりました。なにについて書かれた……。

蓮實 へ?

記者8 このなかで自分はなにを書いたと……思われますか?

蓮實 いや、まったくなにも書いてません。お読みになってくださったんでしょうか? そしたらなにが書かれていましたか?

記者8 空想上の表現ばかり……。

蓮實 この小説は私が書いたものの中では一番女性に評判がいいものなんです。私は細かいことはわかりませんが、たぶん今日の選考委員の方々のなかでも、女性が推してくださったと私は信じております。

司会者 ウカイさん、どうぞ。

記者2 今回は場所は日本ですけれども、いろいろ海外の場所とか、思い出、回想のなかでいろんな場所が出てきますし、歴史的な背景も出てきます。このようなことについては、あらためて小説的なディテールを書く時になにかお調べになることがあったのか、それはまったく一切なく、蓮實さんの想像の世界のなかで書き進められたのか?

蓮實 はい。私の想像のなかだけで書き進めたわけですけれども、同時に読んでいた書物のなかから「あ、これはおもしろい」と思って拾ったケースなどがあります。

司会者 ほかに内容についてなにかございますでしょうか?

記者2 伯爵夫人と若い青年との出会いというのは、なんとなく昔の、例えば映画とか、もちろん映画も最初のほうに出てきますけれども、昔『個人教授』という映画とか、いわゆる年上の女性とか、そういうものもありましたけれども。なにか蓮實さんが今までお読みになったり、映画でご覧になったりしたものというのが出てきたのか。

それともなにかまず最初に伯爵夫人のような女性が出てきて、そのあと「これだったら青年がいい」とか、それとも逆に青年が最初にあって、やってるうちに伯爵夫人が逆に出てきてしまったのか。そのあたりをもしおうかがいできれば。

蓮實 あの、今のご質問ですけれども、私を不機嫌にさせる限りでありますので、お答えいたしません。

司会者 マツダさんどうぞ。

記者4 たびたびすいません。例えば冒頭の1文目の文章に「ばふり、ばふり」といいうちょっと変わった擬音語みたいのが出てきたり、なにかおもしろい擬音語とかおもしろいひらがなが多い小説だなと思うんですけれども。

こういう言葉というのは、もちろん小説は向こうからやってくるものだとは思うんですけれども、どういうふうに使われたのかなというのをうかがえたらと思うんですけれども。

蓮實 「ばふり、ばふり」というのは、戦前に中村書店という漫画を出している書店がありました。そのなかで2人の少年が東南アジアに旅する話がありまして。そのなかで、東南アジアの、天井に貼ったカーテンを冷房のために揺らすわけですね。その時に「ばふり、ばふり」という言葉を使っていたので、私が今からほぼ70年前に読んだ言葉がそのままあそこに出てきているというふうにお考えいただいていいと思います。

司会者 そろそろよろしいでしょうか? ほかにございませんね。ありがとうございました。では、これで蓮實先生の受賞の会見を終えたいと思います。ありがとうございました。