INSTANT KARMA

We All Shine On

コンビニ人間

どうやら私と白羽さんは、交尾をしないほうが人類にとって合理的らしい。やったことがない性交をするのは不気味で気が進まなかったので少しほっとした。私の遺伝子は、うっかりどこかに残さないように気を付けて寿命まで運んで、ちゃんと死ぬときに処分しよう。そう決意する一方で、途方に暮れてもいた。それは解ったが、そのときまで私は何をして過ごせばいいのだろう。

第155回芥川賞候補作で、『文學界平成28年/2016年6月号に掲載されている村田沙耶香コンビニ人間』をようやく読んだ。

『授乳』と『ギンイロノウタ』収録作品(いずれも短編)は読んでいた。自分にとってはいずれもなんとも感想の持ちようがない作品だったので、最新作の「コンビニ人間」でこの作者の何かをつかもうと思った。

これが芥川賞に選ばれるかどうかはどうでもよいし、選者にどう評価されるのかにも興味がない。自分にとって面白いかどうか、ということだけを基準に読んだ。

面白かった(というのも面白くない小説は最後まで読めないので)。 ただしいわゆる壊れた内面を正常な文体で描写するという意味においてはきわめてオーソドックスで「まともな」小説であり、中原昌也的な前衛あるいは木下古栗的な実験を期待して読むのは間違っており、己の動機の不純さに思い至らせられる出来事であった。