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棋士群像(先崎学九段)

将棋の棋士たちが好きだ。

 

自分の実力だけが頼りの世界に生きる人間だけが持つ清々しさを感じる。

 

勝負師であると同時に、将棋の普及のために尽力する役割を果たす棋士もおり、勝負に徹することに専念する棋士もいる(普及活動への参加は強制ではなく、棋士の意思が尊重されているようだ)。

 

羽生善治藤井聡太以外にも、魅力的な棋士たちはたくさんいる。

 

そんな棋士たちへの一方的な想いを、思いつくままに書いてみたい。

 

第1回目は、先崎学九段。

 

 

羽生世代に属し、若い頃は羽生以上の天才と見られていたこともある。

 

棋士として以外に、文章家としても魅力的で、いくつものエッセイ本を出版している。

 

 

彼のエッセイを読んで、羽生世代の棋士たちがますます好きになったものだ。

 

(そういえば、彼のエッセイに登場する羽生世代の代表的な棋士の一人、郷田九段が、今日放映されたNHKのトーナメント戦で、若手の実力者、菅井王位に完勝していた。なんだか嬉しくなった)

 

今はすっかり貫禄の突いた先崎氏だが、10代の頃は、林葉直子と一緒に、米長邦雄内弟子をしていた。師匠に負けず個性的な弟子たちである。

 

師匠譲りか、遊び好きでも有名で、夭折した村山聖とも飲み友達だった。

 

肝心の将棋の方は、A級まで上がったものの、タイトルとは無縁で、同期の天才棋士たちには水をあけられてしまったが、普及活動の面では大いに貢献した。

 

そんな先崎だが、2016年の竜王戦を巡るソフト不正騒動は繊細な彼の神経にダメージを与えたようだ。

 

三浦九段が復帰した後に対戦した対局の自戦記「第65期王座戦2次予選 三浦弘行先崎学」は、第29回将棋ペンクラブ大賞の優秀賞を受賞した。

 

この自戦記には、あの事件によってすべての棋士が抱えることになった「孤独と苦悩」が先崎独特の文体で存分に吐露されていた。

 

先崎はいくつも記憶に残る名文を残しているが、この自戦記は、これまでに読んだ先崎の文章の中でも、最も感動したものの一つだ。

 

ペンクラブの授賞式に先崎の姿はなかった。体調を崩して、2017年9月から半年間の休場の最中だったためだ。

 

今は東京・西荻窪で「囲碁・将棋スペース 棋樂」を開設し、囲碁棋士である夫人と共同で運営している。

 

来年度から復帰して、またファン達の前に元気な姿を見せてくれると思う。あの人懐っこい笑顔と才気溢れる文章に再会するのを楽しみにしている。