2016年、竜王戦の挑戦者になった三浦は、あやうく棋士生命を絶たれる危機に遭遇する。
幼い頃から1日20時間将棋の手を考えるという生活を送り、人生のすべてを将棋に捧げてきた三浦にとって、棋士であることを否定されることは、自らの存在意義を失うに等しかったろう。
それは、すべての棋士にとって他人事ではありえなかったはずだ。
三浦だけでなく、将棋連盟が、未曽有の危機に立たされた。
昨日紹介した先崎学九段の言葉を借りれば、
「この数か月、棋士たちが当たり前の仲間意識、笑う余裕をなくしたのが何より辛かった。」
あのときの暗闇のような状況から、現在のような空前の「将棋ブーム」を想像することはほとんど不可能だった。
こと将棋の歴史に関しては、天の配剤というか、偉大な摂理のようなものを感じざるを得ない。
三浦九段も見事に立ち直った。今年度の成績は、現時点で20勝14敗(勝率5割8分)。途轍もなくレベルの高いトップ棋士どうしの苛烈な闘いの中で、この成績は立派なものである。
ちなみに、あの羽生善治竜王は現時点で28勝22敗(勝率5割6分)。
佐藤天彦名人は15勝17敗(勝率4割7分)。
そして、今週の金曜日、3月2日に、順位戦A級最終局において、三浦は、A級残留をかけて、渡辺明棋王(前竜王)と対決する。
何と言う運命のめぐり合わせであろうか。
個人的には、今年度で最も注目する対局の一つである。
三浦頑張れ。渡辺頑張れ。
これこそが人間同士のドラマだ。