INSTANT KARMA

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棋士群像(木村一基九段)

将棋ファンの間ではすっかり「将棋の強いおじさん」として認知されている、玉頭の薄さをものともしない強靭な受けの棋風で知られる「千駄ヶ谷の受け師」こと木村一基九段である。

ニコ生などの将棋番組で登場する日は、僕などは一日中パソコンの画面を見ながらニヤニヤしっぱなしで笑顔が絶えることがない、解説と雑談の名人でもある。

解説では冗談ばかりの「将棋の強いおじさん」は、本当にめちゃくちゃに強く、タイトル戦にも多数回登場しているのだが、なぜかまだ一度もタイトル奪取にまでこぎつけたことがない、「無冠の帝王」としても知られる。

僕が木村九段を大好きなのは、彼が連発する毒舌交じりのユーモアの向こうに、途方もない生真面目さと将棋に対するこれ以上ないほど真摯な思いが透けて見えるからだ。

そのまっすぐな愛情は、将棋ファンに対しても同じ深さで注がれていることをたしかに感じるから、負けたときの悔しさも含めて、これ以上に応援しがいのある棋士はいないのだと思う。

純粋でまっすぐな人だらけの棋士の世界で、木村はその純粋さを照れ隠しのようなユーモアで包んで、将棋への熱い思いと深い洞察をファンに届けてくれる。

木村九段のような人がいるおかげで、3手先がどうしても読めない僕のようなボンクラな将棋ファンも、トップ棋士うしの対局という、人類の究極の知恵比べであり気が狂いそうに深くて混沌とした場を、極上のエンターテイメントとして楽しむことができるのだと思う。

本人曰く「今、娘が見ても私とわかんないんじゃないかな」