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私はいったい、何と闘っているのか

つぶやきシローの書いた小説『私はいったい、何と闘っているのか』を読む。

若い世代は「つぶやきシロー」といってもピンとこないのかな。相当むかし、一番人気が出たころに「つぶやきシロカセ」というのを買ったことがあるくらい、彼のネタが好きだった。

2016年に出たこの小説は、彼のつぶやきネタの延長のようでありながら、ストーリーや構成もしっかりした、見事な作品だ。

それにしても芸人で文才のある人の多さには驚かされる。まあ面白いことを考えてそれを他人に伝わるように巧みに表現する仕事なのだから、その達人といってよい人たちの書くものが面白いのは当然なんだけど。

涙が出るほど笑わされ、最後には本当に涙が出る。

サラリーマンの悲哀という言葉で括るにはあまりに切ない、同時にめちゃくちゃに笑える、そしてたまらなく愛おしい。最初の数章は、変な人のぶっとんだ思考回路と行き切った行動を独白で表現する中原昌也的な世界を感じさせたが、途中から意外な展開を見せる。

ドラマや芝居にしても面白そうだが、こうやって小説の形で表現する方が深みと味わいがあるような気がする。

いいものを読ませてもらった。