INSTANT KARMA

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私の東京物語(3)

第3話

中学一年生の時、はじめて原宿に行きました。服を買うためです。当時もらったお小遣いを全て甘いパンを買うためだけに使っていた私は、ものすごく太っていました。対照的にしょっぱいパンが好きだった姉は痩せていてファッション雑誌ばかり読んでいたので、自分でデパートへ行き選んで買ってきたオシャレな服ばかり着ていました。小さい頃は姉からのおさがりを着ていたのですが、この頃の私はおさがりでかわいい服をもらっても全然入らないほど太っていたので、ただ母がスーパーで買ってきた楽に着られる服を着て過ごしていました。

鳥居みゆきの姉はその後モデルになり、活躍。みゆきが芸人になってからも一緒にテレビ出演したり単独ライブを見に行ったりと仲良しの様子。幼いみゆきにとって姉は憧れの存在であると同時にコンプレックスの源でもあったのかもしれないことがこの記述から読み取れる。

そんな日々を過ごしていたある日の土曜日、父が急に思い立った様子で「おまえたち、あす原宿でも行って買い物してきなさい」と言い放ち私と姉に一万円ずつ渡してきました。服飾業をやっていた父は娘の着るもの(特に私の着るもの)が気に入らなかったようです。姉は「やったー!」と言い私は暗い顔で「わかった」と言いました。 原宿で買い物ということでウキウキし次の日着る服の支度をしている姉を横目で見ながら私はとても憂鬱でした。なぜなら着ていく服がなかったからです。いや、着ていく服なら姉のいらなくなった服はあります、しかし入らない。かわいい服を買いに行く時のかわいい服がない、これはなんて究極のパラドックスなんだ、なんてことを考え、あすが来ないことを祈りながら眠りにつきました。

親にお小遣いをもらって原宿に買い物に行くなんてウキウキルンルンになるのが普通だろうに、そうならない(なれない)のはやっぱりイケてる姉の存在があったからではないか。みゆきに美人の姉がいなければ芸人・鳥居みゆきは誕生していなかったかもしれない・・・なんてこれを読んで思った。