INSTANT KARMA

We All Shine On

2022.1.2

年末年始はあっという間に過ぎ去る。近所の神社でおみくじを引いたら「苦労もなくだらだら過ごさず堅実にやれ」と書いてあった。商売では損失は出ないそうだ。都合のいいことだけは信じることにする。

 

今日の夕方BSで放送していた黒澤明の特集番組を見た。高峰秀子の伝記などにも出てくる演出家(?)の野上照代という人がきっぷのいい老婆としてコメントしていて、以前にも別の番組でこの人を見たと思った。黒澤は『用心棒』や『七人の侍』『生きる』『赤ひげ』などの傑作群を取った後、アメリカとの共同制作『トラトラトラ』を途中降板(解任)、低予算の『どですかでん』を撮った後に自殺未遂にまで追い込まれた。ロシア映画デルス・ウザーラ』を取ったあたりから大作志向が顕著になり、『影武者』『乱』の撮影などで〈黒澤天皇〉の異名を取るほどの独裁ぶりをNHKの取材班が記録に収めている。年末に以前採ってあったのを見た原節子主演の『わが青春に悔なし』はなかなかよかった。映画としてよかったというより原節子がよかった。原はしかしこれ以降黒沢の映画には出ていない。高峰秀子も黒沢の映画には出ていない。黒沢映画でちゃんと見たのは『生きる』くらいだがこれはよかった。大名作と思う。ドストエフスキーに心酔し、ヒューマニズムを謳い上げた諸作品は感動的だが、三船敏郎主演の娯楽作品や後年の大作群はいまひとつピンとこない。今は大掛かりなセットを組まずともCGで表現できるし、一つ一つの絵面(えづら)に拘る大規模な野外ロケを行う黒澤やタルコフスキーのような監督はもう出てこないだろう。もっと言えばもう映画という表現形式の時代は旬をとうに過ぎてしまったのではないか。

 

元旦の夜に北川景子が瀬戸内の美術館めぐりなどする特集番組をBS日テレでやっていたのを見た。北川景子と瀬戸内といえば、曾祖母が倒れたという知らせを受けて東京から実家まで急ぐという内容の「瀬戸内まで」というエッセイを思い出す。北川景子は子供を産んでから一層腹が据わった感じでいい意味で余裕と貫録のようなものが出てきているのを感じる。今年は年女らしいが三十半ばを超えても魅力を増して人気も衰えない稀有な女優である。もう生涯の代表作のようなものを強いて求めずとも今後は公私ともに充実した生活が待っているのであろうと思う。

 

その番組で北川景子が瀬戸内にある横尾忠則の美術館を訪れていたので、「横尾忠則 瀬戸内」で検索したら横尾が昨年亡くなった瀬戸内寂聴に宛てた往復書簡がヒットした。あの世の瀬戸内へのメッセージだが、僧侶の瀬戸内が生前に「死んだらどうなるの?」と俗人の横尾に質問したというエピソードが可笑しい。横尾の答えも揮っている。

 

今日の午後は藤井風の「ねそべり紅白」ライブ配信を見て過ごす。春ごろには次のアルバムが出るそうで、その前に「きらり」のリミックスアルバムを出すそうだ。リミックスアルバムで面白い作品というのはあまり思い浮かばない。例外はプリンスのくらいだが、藤井風なら期待したい。藤井風は大晦日紅白歌合戦でも初出場にもかかわらず一番目立っていて、今まで彼を知らなかった人にもかなりアピールしたようだ。菊池成孔が有料チャンネルの企画で藤井風の『何なんw』の楽曲分析動画を挙げているが、楽理なので内容はチンプンカンプンである。