INSTANT KARMA

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A death of a dictator

独裁者の最期というのは、周囲の人間が誰一人信用できなくなって猜疑心に憑りつかれて精神を病んでしまうというのが多い。滑稽なのが有名なスターリンの最期で、自室で脳溢血で倒れたが周囲の医師を始め部下の誰一人として下手に手を出して粛清されることを恐れて絶命するまで十数時間床の上に倒れたままの姿で放置された。この話を後年娘のスヴェトラーナがよく亡命先でアメリカ人などの友人たちに話して聞かせた。

 

ウクライナ出身のセルゲイ・ロズニツァ監督スターリン国葬を記録したアーカイブ映像を基に製作したドキュメンタリー国葬を見た。地下室で拳銃自殺したヒトラーとは違って、スターリンはまがりなりにも「畳の上で」死ぬことができた。盛大な国葬も行われた。二十一世紀のロシアの独裁者はどんな最期を遂げることになるのか。 ロズニツァ監督は、ウクライナ侵略に対する態度への不満から欧州映画アカデミー(EFA)を脱退し、その数日後にEFAがロシア映画の上映を禁止したことに抗議してこう述べている。

「われわれの眼前に展開している出来事は恐るべきものだが、正気を失うことのないようあなた方にお願いしたい。われわれは人を彼の所有するパスポートによって裁くべきではない。その行いによって判断すべきだ。パスポートはその人がたまたまどこで生まれたかを示すものにすぎないが、行いはその人の意図により行われるものだから」