War Is Over

 if you want it

Memoria

アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作映画「メモリア」ヒューマントラストシネマ渋谷で見た。

南米コロンビアを舞台に英語とスペイン語が飛び交うが、映画の印象はこれまでのアピチャッポン映画そのもの。必要最小限の登場人物と必要最小限のカット数。今まで彼の作品を見て魅力を感じている人には納得の2時間余りだと思うが、これが初めてという人にとっては正直キツいと思う。退屈で拷問のようだったという人がいても敢えてそれに反論しようとは思わない(現に客席は満員に近かったが隣の人はひたすら苦痛に耐えている様子なのがよく伝わってきた)。

タイの軍事政権による弾圧から逃れて海外での製作を余儀なくされたのだろうと思しき、監督の静かな怒りが充満している気がした。決して見た後にハッピーになれる映画ではない。

そしてこの映画には、これまでの彼の作品にあった「映っていないものが映っているような感覚」を覚えるシーンがなかったような気がする。これはタイのイサーンの森ではないことに起因するのか、初見ではアピチャッポン映画独特の〈マジック〉が感じられなかった。

あと、セリフのやり取りが薄く、登場人物の言葉から受ける印象がほとんど残らなかった。言語の違いによるのか、後半の川辺から室内に至るまでの男との会話からもあまり伝わってくるものがなかったように思った。

少し厳しめの感想になったが、それでも彼の新作は見ずにはいられないし、画面から伝わる不穏さはまぎれもなく現代の不安な時代を反映している。特に今回の映画では〈音〉の使い方が非常に印象的だが、それも現在の世界情勢と不気味にリンクしていて、今この映画をリアルタイムで見たという体験が自分の中でひとつの重要な〈記憶(メモリア)〉となるのだろうか。