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第80期名人戦七番勝負第3局

挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)が繰り出した渾身(こんしん)の勝負手、△2五桂が渡辺明名人(38)の読み違いを誘い、劣勢に立たされていた斎藤が逆転勝利をもぎ取った。(毎日新聞

斎藤慎太郎八段は、過去のブログにも書いたが、七段時代に詰将棋教室で色紙を書いていただいた。直接お話ししたことのある唯一の棋士である。

その誠実な人柄やファンを大切にする暖かな対応ゆえ、たいへんファンの多い棋士の一人でもある。ぼくにとっても特別な存在である。

その斎藤八段が、二年連続で順位戦A級のトップとなり、二年続けて渡辺明名人に挑戦することになった今回の名人戦は、第一局、第二局を渡辺名人が制し、挑戦者が二連敗という非常に苦しい立場に追い詰められた。

しかし、5月7日、8日にかけて行われた第三局では、冒頭のとおり、中盤までは苦しい形勢だった斎藤八段が、一瞬の隙をついて逆転し、そのまま華麗に決着をつけた。

残り時間の差が大きく、終盤の入り口で名人は2時間余りを残していたのに対し、中盤に時間を使った挑戦者はすでに残り時間10分ほどになっていた。その中で粘り強く形勢を維持した中での劇的な逆転であった。

正直、二連敗したときは今期もダメか、と早くも諦めムードになりかけたのだが、第三局の対局前のインタビューでの表情が明るく、緩みがないのはもちろんだが、いい意味でリラックスして見えたので、もしかしたら、と思っていた。

やや劣勢で中盤から終盤に入るときに、持ち時間を惜しみなく使って最善を目指す姿勢には敬服した。

この勢いで、第四局もいい将棋を見せてほしいと一ファンとして期待している。