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Carnage and Innocence

週刊読書人の、佐藤泰志の評伝『狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅』を書いた中澤雄大佐伯一麦の対談を読んだ。

去年、佐藤泰志の小説や関連本をいろいろと読んでいるときに、中澤氏が十年以上この本の執筆に取り組んでいると書いているのを読み、完成を待ち遠しく思っていた。

『草の響き』が映画化されたときのパンフレットで、とうとう脱稿したと中澤氏が書いていて、早く読みたいと思っていたが、その後の動きを知らず、たまたま書店でみかけたこの対談記事で遂に刊行されたのを知った。

佐藤泰志は1977年に「移動動物園」で文芸誌(「新潮」)デビューし、芥川賞に五回もノミネートされているが、ついに受賞できず、1990年に41歳で自死した。

佐伯一麦も、芥川賞を受賞していない。これは村上春樹が受賞しなかったこと以上に日本文学業界の恥だと思っている。だが佐伯は着実に作品を書き続け、いまや日本を代表する私小説作家として確固とした地位を築いている。

もし佐藤が芥川賞を取っていれば、彼の人生はかなり違っていたのではないか。評伝ではそのあたりも掘り下げられていることと思う。

遺族をはじめ、多数の友人知人、担当編集者らをインタビューし、膨大な手紙も分析し、原稿用紙にして千枚を超える大部になったという。

これは気合を入れて読まねばならないので、機会を見てガッツリ読みたいと思う。