吉田豪とのYouTubeの対談を見て興味を持ち、山田ルイ53世の「パパが貴族」という本を読んでみた。
非常に面白かった。文体に明らかな西村賢太の影響を感じた。
西村は山田と2021年5月20日(木)に「週刊SPA!」の企画で対談している。このときのことを西村は「貴重、かつ有意義な時間。」と日乗に書き記している。6月3日には「山田氏の真摯でナイスなお人柄に感謝。」と書いている。
どういうつながりでこの二人が対談することになったのかは不明だが、おそらく山田が熱心な西村の私小説の読者で、担当編集者がそのことを西村に伝えたのではないか。
件の「週刊SPA!」の対談記事は現在ネットでも読めるが、山田が西村の小説を読んでいて自分の書く文章も影響を受けている云々の話は出てこない。たぶん山田のほうが畏れ多いからといって話題に出さなかったか記事に入れないでほしいと頼んだのだろう。
しかし、西村賢太の私小説が好きな人なら、山田の文章に、とうとう書かれることのないままに終わった「世帯をもち、娘を設けた北町貫多」の世界を彷彿とさせるような場面を見出すことができるにちがいない。そういえば両者にはその体格や風貌にも何となく共通性がある。
山田と娘のこれからの生活を綴ったエッセイもぜひ読みたいと思った。というか、山田にはぜひ私小説を書いてもらいたい。