War Is Over

 if you want it

夢洲(1)

以前うちで働いていた人を思い出させるインスタグラマー(ロシア人)がいたのでフォローする。Saint Petersburg在住で、ロシア版の「Amazonほしいものリスト」みたいなのを作っているので思わず押しそうになったがロシアとの取引は目下ややこしそうなので止めた。

その人は、インターネットの無料求人サイトに出した求人広告を見て応募してきた。

夢洲貴恵(仮名)と名乗る三十六歳女性からのメールを見て、そのサイトのアカウントのプロフィールを調べた。このサイトは求人以外にも物の売り買いに利用されていて、アカウントから過去の出品履歴を調べることができた。婦人服やら、靴やら、子どもの洋服やら、ブランド物のバッグなどを多数出品していた。有閑マダムかな、とも思われた。

メールで、履歴書を持ってくるように伝え、面接の日時を決めた。

夢洲は面接に遅刻してきたが、悪びれる様子もなく、

「履歴書には写真がないとダメですよね? 駅前のボックスで撮ってきたんですけど、ノリを忘れちゃって。ここで貼ってもいいですか?」

といった。

入って来た瞬間にもう採用すると決めていたが、面接の結果は来週中にメールするといって帰した。

週明けに、採用決定したから、仕事や雇用条件などの説明をするので明日来て欲しい、とメールで伝えた。

その日は、小学三年生の子どもを病院に連れていくので都合が悪い、といってきた。

翌日事務所に来た夢洲は、

「採用が決まったというメールを見て、思わず飛び上がって喜んじゃいました」
といった。

「地下鉄の階段を上がって外に出たとき、今日から新しい生活が始まるんだ、と思って最高の気分でした」

夫と別居していて、近くに住んでいるのだ、といった。

「うちの事務仕事なんて、そんなに面白くないよ」

とクギを刺すつもりでいった。

秘書の肩書のついた名刺を作ると、夢洲は喜んだ。

働き始めて二か月くらいして、夢洲は自分から、以前水商売の仕事をしていたと言い出した。

毎日二人でランチを外で食べる習慣になっていて、パスタ屋で向かい合った夢洲が、おしぼりを器用にヒヨコの形にしてから、

「わたしこういうのが得意なんですよ」

といった後に、

「水商売してました」

とこっちに責任を押し付けるようにいった。

つづく