War Is Over

 if you want it

夢洲(6)

そんな夢洲とも、縁の尽きるときがきた。毎日薬(コンサータ)を飲むようになってから、続けて休むようなことはほとんどなくなったが、食欲が失せ、昼食を別々に取るようになった辺りから、徐々に仕事への熱意も薄れてきた様子が見られた。

前に無断欠勤が続いたとき、「無断欠勤は、解雇事由とする。」という覚書を書かせ、それを机の後ろの壁に貼っておいた。それを書いて一年くらいして、週明けから無断欠勤が続いた。携帯に電話しても出ず、メールにも返信がない。とうとう金曜日になって、朝電話してこれで出なければクビだ、と思ったらメールが来て、午後から来た。

差し向かいで事情を問いただすと、「薬を飲む気がしなくて、全身に疲れを感じて食事もせずにずっと寝ていました」という。覚書を交わした以上、じゃあ次から気を付けて、と言うだけで済ます訳にはいかない、というと、分かりました、という。

この期に及んでも、非常勤にするか減給するかという条件でよければ続けてもよいなどといって引き留めようとしていた。だが夢洲の方で、「今月で辞めます」といったので、話が決まった。

それから月末までは、何事もなかったかのように淡々と過ごした。一緒に喜多方ラーメンに行って、夢洲の好きなミュージシャンの話で盛り上がった。夢洲の影響でそれまで聴かなかったジャンルの音楽を聴くようになっていた。

夢洲が辞める一週間くらい前に帰りの地下鉄に乗っていると、ふいに涙が溢れてきて止まらなくなった。周囲の乗客に見られないようにドアに頭を押しつけながら無言で嗚咽した。

最後の日に、喜多方ラーメンから二人で事務所に戻ると、夢洲が、

「今日で辞める気が全然しないんですけど」

といった。

仕事が終わり、一緒に事務所を出て、地下鉄に乗り、夢洲の乗り換える駅で降りた。

「今までありがとう」

といってモンクレールのダウンコート越しに夢洲の背中を掌でポンと叩いた。

夢洲の身体に触れたのは、三年間でこれが最初で最後だった。

そのまま二時間半くらいかけて、家まで歩いて帰った。