War Is Over

 if you want it

まいど

『父・横山やすし伝説』(木村一八著、宝島社、2018年)を読む。

「破天荒なイメージとは逆に本人は気の弱い人間だった」というよく知る人たちの証言を裏付けるかのようなエピソードが並ぶ…のかと思いきや、学校帰りの一八を連れて突然アメリカに飛行機を買いに行ったり、その飛行機で富士山の初日の出を見たり(子らはドン引き)、淀川に勝手に競艇場を作ったり、市役所の人間に川門の鍵を開けさせてボートで花月に通ったりと、十分破天荒である。

これを全部「演じていた」とも思えず、殆どの部分は地だったのだろう。それでも人間だから弱音を吐くときだってあるのは当然。

息子にしか書けないのは、やすしの父親としての「しつけ」の部分だろう。

「うそをつくのは殺人より悪い」という独自のルールがいきなり出てくる。その理由は、うそをつくは自己保身でしかないが、殺人には追い詰められてやる場合もあるからやむを得ないというもの。ツッコミどころ満載だが、もっとすごいのは、やすし自身が浮気して妻にそのことを言わないよう、息子に「うそをつく」のを命じていたということ。イギリスのアラブへの二枚舌外交も顔負けの自己矛盾である。挙句はそのせいで息子の一八は母親と喧嘩して14歳で家を出ていくことになる。

一八がやすしと一緒に過ごしたのは10歳から14歳までのわずか5年にすぎない。やすしは一八の命名について「男は人生イチかバチかで生きんとあかん。だから一八にした」と漫才ネタにしていたが、一八も父親に負けないくらいの強烈な人生を送っている。

病院に入院しているやすしに、「今まで何人の女とやった?」と聞くと、やすしはしばらく考えて、「51人」と答えた。

「暴れん棒将軍だったオヤジがたった51人なんてショックや。そんなん、俺が中学を卒業するまでにやった人数より少ない」と驚く一八。そっちの方が驚くわ。

一八の芸能活動と言えば、個人的にはTBSドラマ「毎度お騒がせします」のイメージしかない。あのドラマの中山美穂は印象的だった。

その後傷害事件を起こして業界を干されたのも、復帰して再度傷害事件を起こしたのも知らなかった。まったく関心がなかったのが正直なところ。この本の中でこの二つの事件の「真相」が書かれているが、興味がないので読み飛ばした。

一番気になる、「風の会」での落選後にやすしが暴漢に襲われた事件については、「知り合いのヤクザの親分に電話をかけまくって、20分で真犯人が分かった」というヤヴァイ記述があるのみで、それ以上の真相は伏せられている。

芸人としてのやすしについては、マネージャーだった木村政雄の証言に全面的に依拠している。たいして目新しい記述はなかったが、「TVスクランブルを降板したのは、久米宏にしゃべりで負けたと思ったからで、本人にとってはショックだっただろう」という発言が興味深かった。

 

写真を見て今の一八がやっさんそっくりなのに驚く。

やっさんに一番可愛がられた末娘は結局漫才師になったのね。