War Is Over

 if you want it

Perfect Days for a Jugle Cruise

…ロッキー・ブライアーは、最もつらかったのは軍隊での基礎訓練でも実戦の行軍でも、ヴェトナムでの戦場暮らしでさえもなかったと語っている。最もつらかったのは―「自分がいったいなんのために戦っているのか、それがさっぱりわからなかったことだよ。結局おしまいまで、わからずじまいだった」

生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日 ヴェトナム戦争の文化とイメージ」(岩波現代文庫を読む。

読む、といっても600頁近い大著で内容も濃密なので、流し眺めたというレヴェル。

大谷能生「 散文世界の散漫な散策 二〇世紀の批評を読む」で取り上げていたので。

この本で何より驚いたのは、著者が日本人であるということだ。文体が、「ベスト・アンド・ブライテスト」のデイヴィッド・ハルバースタムに代表されるアメンカン・ニュージャーナリズムのそれとウリ二つなのだ。

内容も、ほとんどがアメリカの文献の引用・注釈を中心にしているため、アメリカの研究者が書いた本ではないかと何度も錯覚しそうになった。

文句なしに優れた力作である一方で、日本人がこの本を書く必然性のようなものが感じられなかったのも確かである。

章立てが、Ⅰ事実と印象 Ⅱ印象と表現 Ⅲ表現と象徴 Ⅳ象徴とメタファー と互いに一連の流れとつながりを感じさせる表題となっているが、そこまで明確に議論が論理的に発展していくというわけでもなかった。

アメリカにとってヴェトナム戦争は「大義なき戦争」としてトラウマ化しており、戦場の狂気や絶望的な緊張と頽廃の極限状態というイメージが刷り込まれるに至った。その過程を丁寧に追ったドキュメントになっている。ある程度ヴェトナム戦争に関する歴史的知識があることが前提になっている。

本国から遠い東南アジアで217万人の若者が戦い、負傷者27万名、死者が5万1000名という結果となった戦争について、50年経った今でもその記憶の呪縛から逃れられないアメリカ。

では、隣国ウクライナと戦い現時点で7万人を超える死者を出しているロシアは、今後この戦争をどう記憶することになるのか。

両者に共通しているのは、「大義なき戦争」であり、戦場の兵士たちが、自分が何のために戦っているかわからないまま戦っているという点にある。そういう戦争では必然的にモラルの崩壊が起こる。

ジャーナリズムや文学が抑圧され厳しく制限されているロシアでは、この戦争がもたらす社会変容、文化への影響といったものについて論じるのがアメリカよりもはるかに困難だ。

不謹慎な言い方をすれば、今ロシアがウクライナに対して行っている侵略戦争は、ヴェトナム戦争よりもずっと退屈で、文化的な観点からはまったく興味をそそられない。

なぜならこの戦争は、プーチンという偏執狂的な独裁者の一存で始まったものであり、独裁者としてのプーチンは過去の独裁者に比べてずっと凡庸で面白みのない人間にすぎないからだ。

ただひたすらウンザリする、終わりのない悪夢でしかない。だがそれが今の時代にふさわしい戦争なのかもしれない。