War Is Over

 if you want it

王将

羽生善治九段(52)が、王将リーグで六戦全勝して、藤井聡太王将(20)への挑戦権を獲得した。

羽生九段はタイトル保持九十九期という戦績があり、記念すべきタイトル百期を目指す戦いとなる。

この新旧二大天才棋士の対決は、一時は実現しないのではないかと思われていただけに、このタイミングでの実現にはいつもながら天の配剤というものを感じざるを得ない。

王将リーグで全勝という戦績は圧巻だが、強敵である永瀬王座、豊島九段との対局はいずれも、相手の方から倒れたという気がしないでもない内容だった。特に最終局の豊島戦は、普段の豊島では考えられない見落としにより早々に形勢を損ねるという、近年でも珍しいものだった。

だが、それも含めて、実力のうちだ。勝負事はあらゆる要素を考慮しなければならない。現時点で、実力的には藤井王将の優位は揺るぎないと思われるが、どんなことが起こるかは始まってみないと全くわからない。

もし内容面で羽生が藤井を圧倒して勝つようなことがあれば、羽生の将棋人生でも、七冠制覇と並ぶ最大の偉業となるだろう。

しかし勝負の内容よりも感慨深いのは、二日制の七番勝負であるということだ。

正直、藤井聡太が出てくるまでは、もう二日制の対局は廃止してもいいのではないか、インスタントな刺激が求められるエンターテイメントが主流となる中で、二日もかけて将棋を指すのは時流に合わない、と感じていた。だが藤井聡太の将棋なら、二日制でじっくり時間をかけて指すことに価値があると思い直した。彼は読みに時間をかければかけるほど実力を発揮するタイプで、二日制対局の勝率は驚異的なものがある。

羽生にしても、一日制の対局は、体力的にも消耗し、ベストな対局は難しいと思う。二日かけてじっくりと、ペース配分も考慮しながら思う存分考えられる環境は、藤井のような強敵を相手にする上では望ましいといえる。

この二人が、タイトル戦の舞台で差向うという光景を想像するだけでも、将棋ファンにとっては万感胸に迫るものがあるのではないだろうか。

長い将棋の歴史の中でも、最も語り継がれるべきハイライトであることは間違いない。

このタイトル戦があるというだけで、二〇二三年は生き延びる価値がある。