INSTANT KARMA

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対象外

たぶん11月29日の夜が原因と思う。仕事帰り地下鉄に乗っていたら、ドア横の二人座席に座っていた中年女性が突然立ち上がった。心なしか顔に不快感が漂っているように思えた。意味を測りかねたが、席が空いたのでこれ幸いとその席に腰掛けた。隣は二十代後半くらいの男性で、膝の上に小さなラップトップパソコンを載せて、ワールドカップの試合らしきものを見ていた。マスクはしていたが、時々咳をするのが気になるといえば気になった。恐らくさっきの女性はこれが嫌で席を立ったのだろう。二、三駅なのでまあいいかと思い、そのまま座っていた。地下鉄を降り、いつものように家に帰り、いつものように寝た。

翌日、日中に何となく怠さを感じたが、頭痛持ちの自分にはよくあることなのでたいして気にもせず、いつものように帰宅し、風呂に入って寝た。が、どうも熱っぽくて寝付けない。測ると、38度5分あった。これはコロナやっちまったか、と思い、深夜に帰宅した妻に告げたら、明日の朝発熱外来を予約して検査するように命じられ、その際に宿泊療養の手続きもするよう言われた。妻は今週末ごとに実家に通って痴呆症状のある母親の世話をしているので感染させるわけにいかない。その夜は熱にうなされほとんど眠れず。

12月1日の8時を待ち、近所のクリニックで発熱外来のウェブ予約をする。自分は8番目だったが午前の予約はあっという間に一杯になった。保険証を撮影してアップロードしたりスマホでこういう操作をするのは初めてなのでけっこう手間がかかった。慣れない高齢者にはできないだろうなと思った。

指定された時刻にクリニックを訪れる。いつも飲んでいる鎮痛剤で熱は下がって、この時点では特に他の症状もなかった。クリニックでは、インフルの検査もやることになり二時間近くかかった。PCR検査の結果は明日以降にショートメールで連絡する、今数が増えているのでもっと遅くなるかもしれないと言われた。宿泊療養について尋ねたら、厚生労働省のHPに載っているから陽性になったら自分で調べてくれと言われた。今後の手続きの案内の紙を渡され帰された。あまりに待たされたのでこちらも少し横柄な口の利き方をしてしまった。窓口の機械で診察料三千いくら支払う。下の薬局でロキソプロフェンと咳止めと口内炎の薬を一週間分もらう。今薬が足りなくてジェネリックしか出せないがよいかと確認された。医者もカロナールがなくて出せないと言っていた。薬そのものは890円しか請求されなかった。

その日も熱は続いていたが他の症状はなかった。妻も濃厚接触者になるからと仕事を途中で帰ってきた。寝室から出ることを禁じられずっと横になっていたが夜は眠れず、ほぼ徹夜のままワールドカップのスペイン戦をAbemaで見た。こういう状態でなければわざわざ起きて見なかったろうし前半で見るのをやめていたと思う。ドイツ戦と同じで後半に逆転したのに驚いた。追いつかれることもなく守り切ったのもこれまでの日本代表とは違っていた。

12月2日の朝にクリニックから陽性の連絡が来た。重症化リスクなしと判断された人は病院や保健所からの届出対象外なので、後の手続きは自分でやってくださいとのこと。仕事先に陽性が出た旨連絡し、区役所のページから陽性登録センターにウェブ登録する。保険証とクリニックでもらった用紙をアップロードする。質問事項が多く、全身の倦怠感と頭痛の中でやるのは結構きつい。慣れない高齢者にはまず無理だろうと思った。

宿泊療養の窓口に午前中に電話を入れる。色々と質問され、登録の際に入力した情報と同じことを延々と復唱させられるのにやや辟易する。担当の職員も大変だと思うが、もう少し情報共有できないものか。確認の上明日以降に別の担当者から連絡すると言われる。

症状は、薬は飲んでも熱は7度くらいあり、頭痛は続いている。喉の痛みが強くなってくる。咳も出て苦しい。呼吸すると鼻腔に痛みが走るが乾燥のせいだったのかマスクしていると痛みはなくなった。初日の夜が一番キツかったが、これはこれでしんどい。やたらと汗をかき、すぐに着ているものがベトベトになる。食事は妻が運んできてくれる。部屋で横になってタブレットを眺めているしかすることなし。仕事関係先に連絡して日程延期などする。

12月3日の朝、宿泊療養の件で電話がある。また同じ内容を延々と聞かれて答える。調整の上別の担当者から連絡すると言われる。連絡は夜になるかもしれず、ホテルには送迎車で行くが連絡はその当日になるかもしれないという。もちろんどの宿泊施設に行くか選ぶことはできない。退所するまで部屋から一歩も出ることはできない。健康チェックに必要なのでスマホと充電器は必ず持ってくるよう言われた。

どんな生活になるのか、少し楽しみではある。