INSTANT KARMA

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アパ体験

12月3日の午後に都の担当者から電話が来て、明日入ることになったホテル名を告げられる。キャンセルはできませんので、という所から話を始めるのがやや高圧的に感じられたが、致し方あるまい。ホテルは事前に調べておいたリストの中でここは行きたくないなと思っていたところだったがそれも仕方あるまい。その後、ホテルまで送ってくれるタクシー会社の女性ドライバーから電話があり、今朝10時に家の前まで来てくれた。20分ほどで着き、ホテル入り口には先着の車が何台も停まっていた。以後のホテル療養も含めて無料でここまでしてくれるのは行政の有り難さを感じる。逆に言えば、いざとなればこれだけのことができるということでもある。

熱は下がったが頭痛と喉の痛みと全身の倦怠感がある中で荷物をまとめ支度するのは一苦労だが妻がてきぱきと準備してくれてありがたい。

こちらは寝室に隔離されていて声が聞こえてくるのを聞いているしかなかったが浪人生の娘が暴れて発狂したような物騒な声を上げていた。妻も息子も、いつもよりキツめのがきたな、というくらいで大して動揺もしていない。しばらくすると風呂で鼻歌を歌っていたが感情の振幅の幅がどんどんダークな方に振れていっているようなのが気になる。

ホテルの部屋に入るとすぐに電話が鳴って、宿泊療養についての説明を受け、切ったら直後に看護師から健康チェックの電話が入る。コロナで疲れている身で長々と応答するのは大儀ではあったが、事前に体験者のブログ記事をよんでいたので耐えることができた。そうやって入居者がすぐにキレる奴か、対応できないほど状態がヤバい奴ではないかをチェックしているのかもしれない。

別室で自分で血圧を測り、渡されたオキシメーターで測定して体温などと一緒に指定されたWebサイトにログインして入力したりと、いきなりやることが多く、部屋の設備のチェックやら加湿器の設定やらWi-Fiの設定やら荷解きやらしているうちにあっという間に時間が経ち、昼食アナウンスが入る。さっき入力したデータが送信できていないと連絡があり対応した後でエレベーターで一階ロビーに並べられた弁当を取りに行く。食事時間以外はエレベーターの電源は切られ、部屋から出ることは禁じられている。エレベーターが中々来ず往復だけでけっこう時間がかかる。部屋に戻り幕の内弁当の写真を撮って妻に送る。

昼食を食べ終え一階に弁当箱を捨てに行って戻ってきてようやく一息ついてこれを書いている。さっきの看護師との電話で解熱剤は基本的に飲まないように、飲むときは必ず連絡するようにと言われたので頭痛がするが薬を飲むのは我慢している。

夕方に放送があって体温とspo2の数値をウェブで送信。6時には夕食の弁当を取りに来るようにとまた放送がある。当然他の入所者と顔を合わせることになるが当然会話などなく各人が黙々と自分の弁当を持ち帰る。弁当自体は美味しく何の不満もない。

部屋の窓からは隣のビルの壁しか見えないのでカーテンを開ける意味はない。朝昼夜の区別は室内にいれば全く分からない。室内のテレビの大画面に持ってきたタブレットの動画が映るようにして、ずっと能年玲奈のチャンネルを流している。いつまでも汚れのない野生動物のような魅力を保っているのに感心するが、そろそろ三十路なので女の魅力が出てきてもいいのではないかと思う。彼女なら男の搾取を拒絶する新しいセクシュアルな美というものを提示できるのではないかという気がしている。そのためにはファンの側でも娘を見守るおじさん的なパターナリズムを脱皮する必要があるだろう。というより彼女の方でそういうものを置き去りにする瞬間が訪れることを願っている。

ずっと頭痛と全身の微かな倦怠感があり持ってきたラカンに取り組もうという気が起こらない。喉の痛みも薬を飲み続けているが中々消えない。