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鳥居みゆきさんの件

このブログは一時期、鳥居みゆきのことしか書かない時期が長く続いたのだけれど、最近はめっきり触れることもなくなった。

ネット動画をきっかけにブレイクした勢いが消え、安定してテレビに露出する時期がしばらく続いたと思ったら、現在ではお茶の間からはほぼフェードアウトした状態だ。

今は年に1度の単独ライブや舞台への挑戦など、活動自体はマイペースにやっているようだが、いかんせん追いかける気もなくなっている。

鳥居みゆきという類い稀な才能が正当な評価を受けることなく身を潜めてしまった原因について、評論家のように分析する気力も能力もないので、一ファンの素朴な感想をいくつか述べてみたい。

まず個人的に、鳥居みゆきが一番冴えた姿を見せていたネット放送のレギュラー番組『社交辞令でハイタッチ』が有料コンテンツ化してしまったことが残念だった。もっとも無料版『ハイタッチ』が終わるころにはすでに見なくなっていた。

彼女が2007年末からブレイクして以降、人気のターニングポイントはいくつかあって、最初が「結婚宣言」のとき(2008年4月)。これでいわゆるアイドルファン的な層が離れたことは否めない。芸人としての鳥居みゆきのファンが残って、最初の大きな「ふるい」となった。

それから、上に述べた『ハイタッチ』の終了(2009年8月)。地上波の番組では絡みづらい●●●●キャラを一貫していた彼女が、その●●●●ぶりをさらに加速させつつも、傑出したコントローラーとしての一面を垣間見せる(隠そうとしない)ほとんど唯一の媒体だった同番組が終わることで、鳥居みゆきが「本当に何を考えているのか」をファンが知る機会が失われた。

その間も、単独ライブ「告別式」「再生」の開催や、書籍「夜にはずっと深い夜を」の発表など、活動の幅は広がっていたが、実は彼女のキャリアに大きなターニング・ポイントをもたらしたのは、2011年3月11日の東日本大震災だったのではないか、という気がする。

あれ以降、それまで彼女が構築してきた非現実的で恐怖と不安に満ちた世界観というものが、現実によって凌駕されてしまったのではないか。個人的に言えば、あの震災・津波及び原発事故による被害をメディアを通じて目の当たりにしてからは、不謹慎さや毒を敢えて発信する鳥居みゆきの作品に対峙する意欲が失せてしまったというのが正直なところだ。

もちろんこのことについて鳥居みゆきに少しの非もあるわけがなく、彼女自身の活動にとってある種の不幸なアクシデントだったと言うしかないだろう。

ブレイク以後の営業戦略や媒体選択のスキルに問題があったことも事実だと思うが(いかんせん『ロンドンハーツ』特集などで“消費”され過ぎたという感無きにしも非ず)、それ以上に彼女が「時代と寝る」ことに失敗した原因は、才能とタイミングの不幸な組み合わせにあったのかもしれない。

それから、彼女がブレイクした当初から感じていたことだが、『ロンドンハーツ』のような形ではなく「素を見せるトーク」をラジオやテレビでもっと見せておけば、展開は違ったのかもしれないと思っている。これはマネージメントの問題というよりは、多分芸人としての鳥居みゆきの矜持がそうさせなかったのだろう。リアルと妄想の垣根を曖昧にした非日常的な表現にこだわり続けることで、彼女の新たな魅力を発揮できたであろうフィールドを制限してしまったように思う。

これは自分の勝手な妄想だが、彼女は完璧主義者であるがゆえに、表現者として人前に姿を晒す場面では完全に自分をコントロールしていないと気が済まない(不安なのだ)と思う。『ハイタッチ』でブレーキを外して暴走している場面でも、真に我を失ったところを見たことがない。それだけ高度なキャパシティを持っているということだが、それゆえの「隙の無さ」が彼女の立ち振る舞いにある種の閉鎖的な印象を生んでいるような気がする。

だからどうすればいいのかという単純な答えがあるわけではないし、単に「不幸でした」で済ませることもできない。すでに国民的に認知されている存在ではあるが、彼女の年齢からして、芸能人として又表現者として大衆に圧倒的な支持を受ける更なるピークを今後2度3度迎える可能性は十分にある。そうなることを楽しみにしている。

前にも書いたが、僕はこういう感じの鳥居みゆきも大好きなんだ。

youtube:n7qybUoYR90