ぼくは考えた。ひとの生は、なしとげたこと、これからなしとげられるであろうことだけではなく、決してなしとげなかったが、しかしなしとげられる《かもしれなかった》ことにも満たされている。生きるとは、なしとげられるはずのことの一部をなしとげたことに変え、残りをすべてなしとげられる《かもしれなかった》ことに押し込める、そんな作業の連続だ。ある職業を選べば別の職業は選べないし、あるひとと結婚すれば別のひととは結婚できない。直説法過去と直説法未来の総和は確実に減少し、仮定法過去の総和はそのぶん増えていく。
東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』読了。
近未来SFという苦手なジャンルにもかかわらず、冒頭から一気に引き込まれ、頁を繰る手が止められず、昔なら徹夜で読んだと思うが今はさすがに途中でいったん眠り、起きてから夢中で最後まで読み耽った。
詳細な感想は改めて書けたら書きたいが、取り急ぎ
やっぱあずまんスゲェよ。
とだけ言わせて頂く。
ますます好きになりました。
とりあえず思い付きの感想だけ忘れないうちに書いておくと、「私小説的なフック(仕掛け)にまんまとやられた」ことに尽きる。
私小説大好物人間として、あの冒頭部分はあまりにもストライクすぎる。
もちろん私小説じゃないんだが、匙加減が絶妙。
正直SF的な部分はピンと来なかったが、いきなりドスト「地下室」でまたやられた。
「地下室の手記」の「二二が四」のくだり、いろんな本に出てくる。好きなのね。共感。