INSTANT KARMA

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2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

葛西善蔵

硫黄島の本と一緒に葛西善蔵『贋物・父の葬式』 (講談社文芸文庫)も借りてきた。 硫黄島で斃れた兵士たちも哀れだが、葛西善蔵の生涯もまた哀れである。こっちは自業自得だという人もあろうが、自分は後者を愚か者と切って捨てるような見方はできないのであ…

散るぞ悲しき

この週末に読んだ本: 『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮文庫)梯 久美子 『硫黄島 栗林中将の最期』 (文春新書)梯 久美子 『総員玉砕せよ!』 (講談社文庫)水木 しげる 『敗走記』(講談社文庫)水木 しげる 『十七歳の硫黄島』 (文春新書)秋草 …

いまだにブログ派(しかもtcup)

ワクチン第1回目の接種に行ったついでに本屋で千葉雅也『ツイッター哲学 別のしかたで』を買う。頭からどんどん読んでいくとあっという間に読み終えてしまいそうでつまらない。 どういう読み方がよいのだろうか。 …などと考えていたら副反応のためかあまた…

非意味的切断

千葉雅也『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』に手を出している。 ジル・ドゥルーズは一冊も読んだことがなく、いわゆる現代思想やポストモダンとかいうものにはまったく興味がないので、いきなりこの本を読んでも何が書いてあるのか…

For the sake of the Coming Idiots

千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』を読む。 勉強とは、これまでの自分の自己破壊である。 まず、自己の現状をメタに観察し、自己アイロニーと自己ユーモアの発想によって、現状に対する別の可能性を考える。 アイロニーは「決断主義」につなが…

綿矢りさは久坂葉子の生まれ変わりじゃないか?

もうこの歳になると正直なものしか読みたくない、というかウソは読みたくない。 ストーリー(物語)のある小説は、よほどの吸引力がないと、付き合うのがきつい。今回の芥川賞受賞作はどちらも、どうしても読めなかった。 映画やドラマも、よほどのモチベー…

American Journal

今は千葉雅也の『アメリカ紀行』を読んでいる。 2017年10月から2018年1月まで四カ月間ライシャワー研究所の招きでアメリカ(ボストン、ニューヨークその他)に滞在したときの記録。 当時は立命館の教授でいくつもベストセラーになるような本を出して既にその…

千葉雅也の小説は面白い

呪われたオリンピックが呪われたまま終わり、コロナの悪夢はさらに拡大し、そこに全国的な大雨被害が追い打ちをかける。アフガニスタンはバイデン大統領が米軍を撤退させるタイミングでタリバンが全土を掌握し、大統領が首都を置き去りにして逃亡した。 案の…

阪急電車

千葉雅也の小説の何がいいのかを説明するのは意外と難しい。 王道の私小説ともいえるし、今の時代だからこそ成立している小説のようにも思える。 個人的に一番やられた、と思ったのが、『オーバーヒート』の第2章、四十歳の〈僕〉が教授として勤めている大…

Dead Line Over Heat

千葉雅也『デッドライン』(第162回芥川賞候補作)、『オーバーヒート』(第165回芥川賞候補作)を読んだ。 めちゃくちゃに面白かった。その面白さについては改めて書くとして、これらの小説が芥川賞を取れないという事実は、所詮あくたがーショー(笑)が自…

メンタリズム

今朝、家にメンタリストDaiGo(メンタリストの方)の著書が二冊あったので、眼を通してみた。 似たような本がたくさんあるので、もしかしたらちがうかもしれない。 猫に元気がないと、こっちまでそうなりかねないが、自然というのはそういうものかもしれない…

三島と小島

「抱擁家族」は1971年に演劇作品化もされている。 その脚本と演出を手掛けることになった八木柊一郎が原作者の小島信夫を訪問した時の手記が残っていて興味深い。 八木は正直原作者に会うのが気が進まず、どうせ俺の小説をどんな芝居にするつもりなんだとい…

ナコ

大庭みな子の『風紋』という小説を読んだ。 最後の短編という。小島信夫が脳梗塞で倒れて危篤状態にあるという知らせを聞いて書かれた。 二人の対談などの様子から、大庭みな子が小島信夫に好感以上の思いを寄せていることは何となく分かっていたが、最後の…

欠陥

『私の作家遍歴』から気になった箇所を引用。 彼の手になる天国も地獄も、個性を欠いているために退屈なものである。多様で複雑な人間関係はそこにはないのだ。現実の中に生きる人間がそれぞれに面白いのは、まちがっていると見えて実は正当であったり、逆に…