War Is Over

 if you want it

気持ちのいい踏み込み方

見ましたか、糸谷VS藤井戦(見てないか)。

ヘボなので指し手の具体的な解説はできませんが、凄いを通り越して怖くなるくらいの、藤井六段の凄まじい勝ちっぷりでした。

あの剛腕で鳴らす糸谷元竜王が、一直線の攻め合いで、はっきり間合いを見切られて、完敗してしまいました。

この記事のタイトルは、糸谷八段の局後の感想(「終盤、鋭いですし、中盤に切り込んでこられる。気持ちのいい踏み込み方でした」)からとったもの。

この踏み込み方は、2年前に指していたら「ソフトとの一致率」とやらで不正を疑われてもおかしくなかったレベルです。

その前日、A級順位戦プレーオフで、羽生竜王が稲葉八段に勝ち、佐藤天彦名人への挑戦を決めました。これは、夕食休憩までは稲葉優勢と思われていた場面を、一瞬で体を入れ替え、あとは一気に押し切るという、羽生竜王の指しまわしが凄みを感じさせました。

羽生善治藤井聡太

今の将棋界は、この二人の超天才を中心に回っています。

片や47歳で、永世七冠、タイトル99期という気が遠くなるような実績を上げ、今度の名人戦でもし名人位を奪取すれば、通算100期という空前絶後の大記録を達成するということになります。もはや何と形容してよいやら分からないような存在です。

そして15歳の若武者は、その羽生竜王を破って棋戦初優勝を達成し、その後も快進撃を続け、一体誰が止めるのか、いよいよ分からない前人未到の領域に入ってきました。

今週の日曜日には詰将棋解答選手権が行われますが、そこで4連覇すれば、またもや大きなニュースになることは必然。

彼が3年前、小学生で初優勝したときの感想(自戦記)を読んで、その大人びた文章に驚愕した記憶があります。

詰将棋解答選手権の創設者で、日本を代表する詰将棋作家、若島正氏(昨日の糸谷戦の観戦記も担当)は、「藤井聡太という才能を見出したという事実だけで、この大会を作った意味があった」と言っているとか。

彼が8歳のとき、将棋大会で大駒をタダで取られるというミスをしたとき、悔しさをぶつけて紙に書きつけたラップ調の歌詞が残されています(彼の祖母がゴミ箱から拾ってとっておいたもの)。

それを読むと、この頃に既に自分の失敗を客観視し、笑いの対象にすらできるという、高度の人格を身につけていることが分かります。

藤井六段の素晴らしさは、天賦の才能に加えて、激情と達観、情熱と冷静の間を見事にバランス調整できる、卓越した自己統御能力にあるのだと思います。