INSTANT KARMA

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俺はオザワ

オザワといっても、今話題の政治家のことではない。

食道ガンの治療に専念するため一時休業した「世界のオザワ」こと小澤征爾、の甥であり、「オザケン」こと小沢健二のことである。

僕がオザケンをちゃんと聴いたのは『ライフ』が最初だった。

フリッパーズ・ギター」については知っていたが、「なんとなく生意気な奴らだなあ」という印象を持っていたくらいでそれほど気にしていなかった。

僕はオザケンの1個年下で、学生時代ニアミスしてもおかしくない環境にいたことから、個人的にオザケンの噂話をちょくちょく耳にする機会があり、その度に「明らかに住む世界の違う人だな」と思っていたので、フリッパーズ・ギターの世界には積極的に近づく気になれなかったというのもある。

大学を卒業し、就職してまもなく、いろんな壁にぶち当たったり人間関係がうまくいかなかったりして鬱々とした毎日を過ごしていたころ、開店したばかりの恵比寿ガーデンプレイスTUTAYAでふと手に取ったのが『ライフ』のCDだった。

家に帰って、『ライフ』をCDプレーヤーにかけ、流れてきた1曲目の『愛し愛されて生きるのさ』のイントロを聴いた瞬間、なんともいえない気持ちになった。

ウズウズするというのか、ワクワクするというのか、久しく忘れていた感覚だった。

そして、2曲目の『ラブリー』冒頭の、明らかにBetty Wrightの『Clean Up Woman』が元ネタと分かる丸パクリのフレーズを聴いたとき、思わず笑ってしまいそうになりながら、僕はもうすっかりオザケンの『ライフ』の世界に引き込まれていた。

3曲目の『東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディ・ブロー』を聴きながら、僕は無性に外に出たくなった。そこでCDを止めて、CDをオートダビングしている間、散歩に出かけることにした。

いつのまにか心が軽くなっていた。