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この世界の片隅に(10)

この世界の片隅に』の海外での上映が始まる。

日本でもまだ勢いが止まらない状況が続いているが、この映画が海外の国々でどんな風に見られるのかに興味がある。

というのは、日本人である僕は、この映画の「日本的抒情性」とでも言うべきものに飲み込まれてしまって、客観的な視点を失っているのではないか、という思いが未だにあるからだ(加えて僕の場合は「のん」の声優作品という時点で巨大なバイアスがかかってしまっているため、どうしても冷静には観れない面がある)。

この映画の圧倒的な抒情性が、特に日本人のメンタリティに強く訴えるものなのか、世界的な普遍性を持つものなのか、そこが知りたい。

日本人が「昭和20年8月6日 広島」に対して抱く感情を他の国の人が共有するのは難しいだろうか。一方でそれは直接の戦争体験者ではない僕たちの世代がもっている距離感とそれほど違わないのではないかという気もする。

ヨーロッパ人が観たときの反応、アメリカ人が観たときの反応、アジアや第三世界の人々が観たときの反応、それぞれに興味がある。

かつてNHKテレビ小説「おしん」がイランで大好評だったという話がある。そこには女性の社会的地位の低さという観点からの共感もあったのではないかと思う。

ほとんど初対面の会ったこともない男性と結婚すると言う風習が、世界のどこにまだ残っているのか知らないが、戦前の日本ではそれが当たり前のように行われていたということを知らない世代でも、この映画には強く感動を覚えるようだ。

戦後すぐの日本社会を描いた『東京物語』は、映画評論家が選ぶ世界の歴代映画のベストワンに選ばれている。そこには世界の誰もが共感できる普遍的な情緒があったからだろう。

この世界の片隅に』は、果たしてどうだろうか。この映画は、日本を知る上で、そして世界を知る上で、いろんなことを教えられるきっかけになりそうな気がする。