War Is Over

 if you want it

映画・ドラマ関係

千代田区一番一号から四谷三丁目または新橋へのアンダーワールド

森達也「千代田区一番一号のラビリンス」(現代書館、2022)を読む。 発売直後に図書館で予約を入れたら、数十件の順番待ちになり、ようやく読めた。 題材の奇抜さもさることながら、内容もかなりぶっ飛んでいて、面白く読めた。 中島らも「ガタラの豚」の読…

Long Promised Road

「ベイビー・ブローカー」を見た日にもう一本見たのが「ブライアン・ウィルソン/約束の旅路」。 この映画(ドキュメンタリー)は見る前から絶対に外さない確信があった。 ポップ・ミュージック史における二大天才の一人(もう一人はビートルズの存命中のあ…

希望

「ミニシアター・エイド基金」の催しで、のん(能年玲奈)が濱口竜介監督、深田晃司監督とトークしたようだ。 このサイトにイベントで語られた内容や当日の様子が詳しくレポートされている。 日本映画業界の構造的問題、ミニシアターの重要性、日本映画業界…

Baby Broker

映画「ベイビー・ブローカー」を見た。 去年、映画製作の発表があった時点から関心はあり、カンヌで受賞というニュースを見てますます見たいという気がしていたので、やっと念願が叶ったかたち。 是枝監督のカンヌ受賞で話題になった割には日本では客入りが…

国会図書館革命

「本の雑誌」西村賢太追悼号の「北町貫多クロニクル」を見ながら、以前自分で作った時系列メモを修正する。手元にすべての本がないので、よく分からないところはそのままにする。 砂川文次「小隊」(文春文庫)を読了。三篇収録されているが、発表順に「市街…

波の音

入院して四日目の夜、看護婦たちが用があり、私だけが父の枕元に立っている短い時間があった。父が私の顔に目を向けていた。不意に突きあがるような思いが胸に来て、私は父の頬に顔を寄せると、“父が好きだ”と言った。”好きでたまらないのだ”と言った。たま…

暴力と選択

園子温監督の過去の行状が今になって告発の対象になっている。 園監督だけでなくこのところ映画業界における性被害の実態を明らかにする動きが目立っていて、日本版metoo運動が本格的に始まったのかとも思わせる。 「業界では前から有名だった」とか「知って…

当事者性とリアリティ…

どうせ誰も読んでいないブログだから何の気遣いもなく好き放題書いてしまうのだが、「ドライブ・マイ・カー」の韓国手話のシーンが批判を食らってるという。 批判の内容を乱暴にまとめると: 実際に手話を使う立場から見て、手話が消費されていると感じた。…

third time's the charm

「三度目の、正直」という映画を見てきた。 「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー賞(国際長編作品賞)を受賞して現在話題沸騰中の濱口竜介監督による2015年の作品「ハッピー・アワー」の共同脚本を担当した、野原位監督の劇場デビュー作。 「ハッピーアワ…

Memoria

アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作映画「メモリア」をヒューマントラストシネマ渋谷で見た。 南米コロンビアを舞台に英語とスペイン語が飛び交うが、映画の印象はこれまでのアピチャッポン映画そのもの。必要最小限の登場人物と必要最小限のカット数。…

Tales of Moonlight and Rain

溝口健二監督『雨月物語』(1953)をAmazonプライムで見た。 今更シネフィルを気取るつもりもないが、勉強のために。 考えてみれば、まだ溝口や成瀬の代表作をほとんど見ていない、ということは、これから見る楽しみがあるということで、とても贅沢なことか…

Tokyo Story

濱口竜介監督が「ユリイカ2016年2月号 特集=原節子と〈昭和〉の風景」に「『東京物語』の原節子」という文章を寄稿していて、これがなかなか静かな熱量の籠ったいい文章であった。「静かな熱量」というのは濱口監督の映像作品にも共通して受ける感銘である…

passion

濱口竜介監督の「PASSION」(2008年)が下北沢の劇場で上映されていたので見に行った。 正直、映画としてはイマイチ乗れなかったが、濱口監督のフィルモグラフィーを押さえる上では大いに参考になった。 「PASSION」は、2008年東京芸術大学修了制作で、海外…

カメラの前で演じること

映画「ハッピーアワー」テキスト集成であり、濱口竜介監督がみずからその成立過程を解き明かした本、『カメラの前で演じること』をとても興味深く読んだ。 ほとんど演技経験のない俳優たちを使って5時間を超える映画を撮って、それがなぜあれほど、プロの俳…

Happy Hour Again

3,4年前に録画で見た濱口竜介監督『ハッピーアワー』をもう一度見返してみた。 なんとなく見始めたらどんどん引き込まれていき、気が付いたら休日の5時間以上をテレビの前で釘付けになっていた。 長いことにはそれなりの理由がある。この長さだからこそ…

偶然と想像

濱口竜介監督の最新作で、ベルリン映画祭で受賞したという『偶然と想像』を観に行く。 『ドライブ・マイ・カー』で大ホームランをかっ飛ばした濱口監督の、乗りに乗った充実ぶりが伝わってくる、短編作品三話からなるオムニバス映画。 所用で到着するのが遅…

ホン・サンス

昨日見た動画で濱口監督がホン・サンスについて言及しているのを聞いたのをきっかけに、以前から気になっていた彼の作品をいくつかAmazonPrimeで見た。 最初に見たのが2017年の「それから」、次に同年の「クレアのカメラ」を見たが、淡々としたアンチドラマ…

正しい日 間違えた日

濱口竜介監督が女優のイザベル・ユペールと対談している動画の中で、ホン・サンス監督の話題が出ていて、以前から気になっていたので、アマゾンプライムで見れる作品を見てみた。 2017年の「それから」とイザベル・ユペールが出演した「クレアのカメラ」とい…

Drive My Car (ダメ出し編)

もういいかげんしつこいのでこれで終わりにしますが、ネットでのレビューなど見ていると絶賛の評価も多い一方で当然おもしろくなかったとかネガティブな評価もある。 それらを単に価値観の違いと切って捨てるのでは「正しく傷つく」ことを回避してコミュニケ…

Drive My Car(雑感編)

濱口監督の前作『寝ても覚めても』が東出昌大の映画だったように、今回の『ドライブ・マイ・カー』は西島秀俊の映画だったといえる。とにかく最初から最後まで出ずっぱりなのだ(もうひとりの〈主役〉はもちろん「サーブ 900」だ)。 西島は主人公・家福悠介…

Drive My Car 感想(ネタバレ編)

「今作は全体として、なにか停滞している人間の話でもある」 (濱口竜介監督インタビューより) ワーニャ 僕は明るい人間でしたが、そのくせ誰一人として、明るくしてはやれなかった。……(間)この僕が明るい人間だった。……これほど毒っ気の強い皮肉は、ほか…

Drive My Car感想(ネタバレなし編)

『ハッピーアワー』と『親密さ』がとても好きで、他の初期作品も機会があれば是非見たいと思っていたほどだった濱口竜介監督作品で、昨年の8月に公開されているのは知っていながら、今の今まで観に行こうと思わなかったのは、前作『寝ても覚めても』の印象…

ドライブ・マイ・カー

話題の見て来た。 うん、まあ、これは、傑作。 感想は改めて書く。 パソコンの調子がおかしいので。 濱口竜介監督、やりましたね。

『麦秋』

(監督:小津安二郎、脚本:野田高梧、小津安二郎、出演:原節子、笠智衆、淡島千景他/松竹/1951年) 原節子の「紀子三部作」の二作目であり、一作目の『晩春』との対比で見ないと作品の真価は分らないので、以下『晩春』についてのコメントも頻出する。 …

『南の島に雪が降る』

加東大介『南の島に雪が降る』(ちくま文庫)を読む。 最近見た「あらくれ」「浮雲」(成瀬)、「河内山宗俊」「人情紙風船」(山中貞雄)、「小早川家の秋」(小津)などで印象的な演技を見せている俳優の書いた本として手に取ったが、その余りに凄まじい内…

『晩春』

(監督:小津安二郎、脚本:野田高梧、小津安二郎、出演:原節子、笠智衆、月丘夢路他/松竹/1949年) もはや何もかも語り尽くされた感のある古典的作品だが、個人的備忘録として感想を記す。 原節子が強烈。原演じる紀子の激情をまったく意に介さずスルー…

『人情紙風船』

(監督:山中貞雄、脚本:三村伸太郎、出演:中村翫右衛門、河原崎長十郎、霧立のぼる他/PCL/1937年) この映画は最初から最後まで印象に残るシーンに事欠かないのだが、中でも、〈雨の中を佇む浪人・海野又十郎〉と、〈宴会の席で爆笑する海野又十郎〉…

『河内山宗俊』

神保町シアターで山中貞雄監督の『丹下左膳余話 百万両の壺』[4Kデジタル復元・最長版] と『河内山宗俊』[4Kデジタル復元版] を観た。この上映のあることを知ったのは先日岩波ホールで見つけたパンフレットで、山中貞雄監督のことは図書館で借りた坪内祐三『…

山中貞雄

坪内祐三によると、普通の映画好き百人に、日本の映画史上で最高の映画監督は誰かと尋ねれば、一位はたぶん黒澤明で、本格的な映画好き百人になると、小津安二郎だが、さらにマニアックな映画好き百人になれば、一位は、きっと、山中貞雄だろう、という(『…

人間鑑定図

高峰秀子著『にんげん蚤の市』収録「人間鑑定図」より ある日のせりに、俗にお歯黒壺と呼ばれる越前の壺が出た。丹波、信楽(しがらき)など、ゴツゴツとした土(つち)ものにはあまり縁のない私だけれど、そのお歯黒壺は珍しく小型でコロリと丸く、生意気に…