INSTANT KARMA

We All Shine On

東京は春を思わせるような良い天気の中、家から出ずにアピチャッポン・ウィーラセタクン『世紀の光/光りの墓』ブルーレイを見て過ごす(途中昼寝あり)。

どちらも柔らかくのどかといえばのどか、美しく夢のような映像、と言えばそうなのだが、軍事政権に対する静かな抗議の意思が込められていることは、この映画が国内では上映されていない(監督が上映を拒否している)という事実からも分かる。 タイでは軍事警察による芸術家の活動への介入が露骨で、歩くだけのパフォーマンスで逮捕勾留されたり、あらゆる文化的イベントは当局の監視下に置かれているという、昨日読んだイジー・クラトフヴィルの『約束』に描かれた1950年代の東欧全体主義国家のような状況が今も続いているようだ。 そうした背景を抜きにしてこれらの作品を夢のようなふわふわした印象だけで捉えるのは大切な何かを見失うことになるだろう。 それでもやはりこれらの作品は午後の白昼夢のように穏やかで、真夜中の悪夢のように美しい。